虎之助・一大決心
ここは川辺にあるほったて小屋。虎之助はここに住んでいた。
ここは虎之助の仮住まい、誰も住んでいない川辺の小屋を改造して、勝手に住まわせてもらっていた。
おそらく、この小屋の家主はすでに死んでいる。
虎之助は獣のような兄と一緒に過ごしたせいで、そういうことに人一倍敏感だった。
この小屋で虎之助が何をしているかというとーー
「篝さん、俺はあなたのことを獣だと言って罵倒しましたが、俺が間違えていました!あなたは獣じゃない!」
虎之助は普段は持たない花束を用意し、篝への謝罪の練習をしていた。
「よし、これで俺の誠意は伝わるはずだ」
そして願わくは篝さんとお近づきになりたい!!
虎之助はおそらく叶わないであろう希望を胸に荷車を担いだ。
* * *
場所は変わってここは壬生屯所の台所ーー
「へぇ、じゃあ小太郎は菊の練り菓子なんかも作れるのか!」
「ん、ああ。他にも色々作れるよ。菊なんかは比較的簡単だから作ろうか?」
私は秋月篝。
たった今小太郎から「菊なんかは簡単に作れる」と聞いて驚いている。
「じ、じゃあ作ってくれないか?あれを初めて菓子屋で見た時に感動したんだ。本物の菊かと思って……」
「いいよ」
小太郎は砂と泥だらけの顔でこちらを見た。
「なぁ小太郎。お前はなんでいっつも顔を砂だらけにしてんだ?」
「それは……色白なのを隠すためだよ。俺は生まれつき肌が白くてキメが細かいから。女と勘違いされる」
「女に勘違いされると言うか、女だしなぁ」
「シッ、まだ朝早いから隊士たちは起きてないけど、どこで誰が聞いてるか分からねえ」
小太郎はそう言って私に包丁を向ける。
確かに、元足軽で逃げ足は速いとは言っても小菊(小太郎)は私みたいに戦う術は持ってないもんなぁ。
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