小太郎の夢
壬生屯所の台所、皆が寝静まった時刻に小太郎は菓子を作っていた。
壬生屯所の台所にてーー
子の刻。小太郎は今日も菓子を作っていた。
全ての仕事が終わった後の小太郎の密かな楽しみだった。
「綺麗にな〜れ、綺麗になぁれ」
そう小太郎が唱えると、不思議とその声に答えるかのように手のひらの上に乗った花の菓子が美しく花開いた気がした。
「お前は素直ないい子だね」
小太郎が手の中の菓子に話しかけているとーー
「小太郎!まだ起きてたのか!?」
そう呼ぶのは隊士になりたての柴咲明彦。
柴咲明彦は近藤局長に腕を見込まれてスカウトされて新撰組に入ることになった。
どうしてか、暇を見ては小太郎に話しかけてくるのだ。
「また来たのか明彦。飯の残りを探しに来たのか?」
明彦はバツが悪そうに頭をかいた。
「あはは、バレたか」
どうやらこの柴咲明彦は残飯をあさりに来たようだ。
「……俺の分なら少しだけ残ってるから、持っていけよ」
小太郎は仕方無さそうに自分の分のちっこい弁当を指差した。
明彦は小太郎の小さくて痩せた体を見て言った。
「お前の分はもらえねえよ。働きづけでまともなもん食ってねえだろ」
「そっか。ごめんな、屯所の隊士達は思ったより大喰らいが多くてな。お前もだけど」
「あはは、ちげえねえ!ところで先から何を作ってんだ?」
「趣味の菓子を作ってる。いつか胡蝶蘭の花の菓子を作るのが目標なんだ」
そう夢を語る小太郎の目は、前髪に隠れて見えない。でも確かに輝いていた。
「……小太郎。その前髪邪魔じゃねえか?」
「……いや、今のところ支障はないぞ」
明彦はそう言いながら小太郎の方へ近づく。
「前髪……」
(前髪あげた姿、見てみたいな)
「明彦?」
「なんだ小太郎!またここにいたのか!?今日は朝まで飲むって俺と約束してただろ!」
明彦が小太郎の前髪に触ろうとした瞬間、それを庇うように永倉が出て来た。
子の刻は大体午後23時ごろですが、季節によって時刻は変わっていました。
明彦は名前は付いてますがほとんどモブです(悲しみ)
最後まで読んで頂きありがとうございました。




