恋煩い・永倉新八
小太郎は湯を沸かし直すために再び風呂場に来ていた。そこへ永倉新八が来て……
「小太郎〜?いるかぁ?」
(この声、永倉の兄さんだ!)
「すみません!今大急ぎで沸かしてますから」
「いいよいいよ、俺もわかすよ。次は俺の番だからな」
そう言って永倉は小太郎の隣に来て、一緒に竹筒を吹き始める。
(兄さん、優しいな……)
「……いつも思ってたんだがその前髪うるさくないか?汗もすげえしさ」
小太郎の顔から流れる汗を見ながら、永倉は小太郎の前髪に触れてきた。
やばッ……
ずるっ!
「おっと危ねえ!」
風呂場はただでさえ足場が悪い。
濡れた足場に小太郎が足を取られて滑りそうになった時ーー
永倉が素早く小太郎の後頭部を庇うようにして覆い被さった。
ちょッ……
「危ねえ危ねえ、小太郎、怪我はし……」
永倉の下には、小柄で、目の冴えるような美人がいた。
どんな美しい舞妓にも敵わない透き通るような色の白さ……
胸元が先程の騒動で顕になり、サラシを巻いてはいるがその豊かな盛り上がりは隠しきれずにいて……
「えっ?えっ?小太郎……だよな?舞妓の姉さんか誰かと入れ替わった??……わけはない、か?」
「……//もう、永倉さん……せっかく隠してたのに……」
小太郎の言葉を聞いて、永倉は顔を青くさせたり赤くさせたり。
「いずれ誰かにバレるとは思ってましたけど、よかった永倉さんで。他の方には内緒にしてください。バレると色々と厄介なので……」
そう言うと小太郎はサッと胸元を直し、前髪をおろして何事もなかったかのように作業に戻った。
「ええええええ!?!?」
理解が追いつかない永倉だけが混乱の叫びをあげた。
* * *
俺は永倉新八。
一応新撰組二番隊組長ってのをやらせてもらっている。
新撰組は、常に血の匂いが染み付いてる。
洗っても洗っても、こびりついて取れねえんだ。
そんな血の匂いと、殺気と、いつ殺しても殺されてもおかしくない身。
新撰組は主君松平容保公に忠義立てをし、果ては京都の治安を守るため。と大層な大義名分を掲げてはいるが、実際にはただ人が斬りたいだけの奴もいる。
そんなだから、俺はこれといった伴侶を持たないことにしてる。
こんな血に染まった手で抱くのは、行きずりの女か遊び女。
だっておかしいだろ。
幾人も人を斬ってきた俺が、普通の幸せを手に入れるなんて。
ーーところが。
「はじめ、どうやら俺も煩ったようだ」
新撰組の皆が永倉新八と同じ考えだったとは思いませんが、婚約や結婚をする人は選んでたと私は思います。特に新撰組は特殊な組織ですから。
急に真面目な話になっちゃった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




