斎藤一という男
敏姫に熊に間違えられた斎藤一は冷静に対応する。
※このIF物語では新撰組のメンバーが容保様に直接関わってきます。
「えっ」
「えっ」
姫様と私の声が揃い、顔を見合わせる。
容保様は姫様のそばへ歩み寄ると、安心させるようにそっと肩に手を置いた。
「……驚かせてすまぬ。害はない」
「が、害……」
姫様はまだ少し震えている。
その様子を見て――
「ははっ」
低く、しかしはっきりとした斉藤の笑い声が響いた。
「……普段堅物な殿が、そのようなお顔をなさるとは」
「……」
容保様がわずかに眉をひそめる。
だが、その耳はほんのり赤い。
(あ、これ絶対照れてる。誰か写真撮ってーー!!)
「……敏」
容保様は姫様に向き直る。
「大事ないか」
「……はい……殿がいらっしゃるので……もう大丈夫ですわ……」
その言葉に、容保様の表情が思わず緩む。
「……そうか」
二人の空気が、ふわりと柔らかくなる。
その様子を見ていた斎藤が、また笑って肩を揺らした。
「……なるほど。今夜は永倉といい酒が飲めそうだ」
一人でうんうんと納得している斉藤に、容保様が問う。
「……何がだ」
「いや」
短く答えると、斎藤は踵を返した。
「……邪魔をしたな」
そう言い残して去っていく背中は、やっぱり少し熊っぽかった。
「……とめ」
「はい?」
「……やはり、少しだけ……熊に見えましたわ……」
「わかります」
私は真顔で頷いた。
(でもまあーー)
振り返れば、容保様の袖をそっと掴む姫様と、その手を自然に受け止める容保様。
(熊よりも何よりも……)
このお二人の方が、よほど破壊力がある気がする。
「……殿」
「……なんだ」
「やっぱり、少し怖かったですわ……」
「……そうか」
そう言って、容保様は優しく姫様を引き寄せた。
(あーーーもう!!見てるこっちが恥ずかしくなるよ!)
「……私は見なかったことにしますね」
小さく呟きながら、私はそっと距離を取った。
(でも、よかったですね。姫様。姫様が生きてなかったらきっと……)
こんな風に穏やかな時間はきっとなかったのだから……
ふと見ると、淡紅色のツツジが風に吹かれて揺れていた。
すみませんこの話を載せないまま次の話を載せていました。訂正してお詫びします。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




