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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十八章 獣は所詮獣

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獣に惚れた虎

廃寺から戻ってきた「適当組」だが、虎之助はずっと様子がおかしくて……?

 場所は変わってここは壬生屯所・斉藤の書院ーー


 今日は斉藤は黒谷に出かけていないので永倉が仕切る事になった。


「じゃあ早速!俺たちじゃあの浪人たちの話は聞けなかった。よって篝と虎之助が頼りだ。何を話してた?」


 永倉が珍しく真面目に覚え帳を開き、メモを取る姿勢を見せた。


 永倉は意外にも文字が書ける。と言うか、新撰組の組長クラスは大体の者が読み書きができていた。


「なんか豹魔の旦那がどうとか言ってたな。火を起こしてくれるそうだ」


 篝が浪人の会話を思い出しながら話す。


「ふんふん、あとは?」


「酒癖が悪いらしい。あとは〜、俺たちも役に立ちたいとか、そういう事は聞こえたな。あと……」


「あと?」


「新撰組は人斬り集団だってさ。さすが壬生狼。ここらの野盗や浪人が恐れて近づかないわけだ。はっはっは」


 篝は皮肉たっぷりに笑う。篝自身気付いてはいないようだが、まだ新撰組を信用してないのだろう。


「山猫、笑いすぎですよ」


「……ふん」


 珍しく沖田が(いさ)めたが、篝は特に反論はしなかった。


「で?虎之助は?何か他に聞いたか?」


 寺から屯所に着くまでの間、一言も発しなかった虎之助を若干不思議に思ったのだろう。永倉が聞いてみた。


「…………//覚えてないです」


「はあ?お前の兄の事だぞ?せっかく命がけで行ってきたってのに」


「獣の、胸が柔らかかった事と、あと意外にもいい匂いがしました……//」


「は?」


「……は?」


 永倉と沖田が同時に反応する。

 

 篝の方を見ると、特に気にもしてないようで髪をいじっている。


「あと髪の毛もいい匂いがします」


「おいおいおいおい、ちょっと待て。虎之助!」


「草むらで押し倒されて……胸を押し当てられて……」


「ちょっと待て!ストップストップ!総司!漏れてる漏れてる!殺気が漏れてる。虎之助、どうしちまったんだお前ェ!」


 永倉は虎之助の体をガクガクと揺さぶる。


「俺……惚れちゃいました……」


「えっ?!だ、誰に?ひょっとして……」


「……そこの獣にです……」


 そう言って虎之助が指をさした先には、手持ち無沙汰に髪をいじる篝の姿が。


「へぇ……」


 その言葉を聞いて、沖田がゆらりと立ち上がる。

 

 その佇まいは、今にも人を斬ってしまいそうだった。


まさかあんなに憎んでいたはずの獣(篝)に……


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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