獣に惚れた虎
廃寺から戻ってきた「適当組」だが、虎之助はずっと様子がおかしくて……?
場所は変わってここは壬生屯所・斉藤の書院ーー
今日は斉藤は黒谷に出かけていないので永倉が仕切る事になった。
「じゃあ早速!俺たちじゃあの浪人たちの話は聞けなかった。よって篝と虎之助が頼りだ。何を話してた?」
永倉が珍しく真面目に覚え帳を開き、メモを取る姿勢を見せた。
永倉は意外にも文字が書ける。と言うか、新撰組の組長クラスは大体の者が読み書きができていた。
「なんか豹魔の旦那がどうとか言ってたな。火を起こしてくれるそうだ」
篝が浪人の会話を思い出しながら話す。
「ふんふん、あとは?」
「酒癖が悪いらしい。あとは〜、俺たちも役に立ちたいとか、そういう事は聞こえたな。あと……」
「あと?」
「新撰組は人斬り集団だってさ。さすが壬生狼。ここらの野盗や浪人が恐れて近づかないわけだ。はっはっは」
篝は皮肉たっぷりに笑う。篝自身気付いてはいないようだが、まだ新撰組を信用してないのだろう。
「山猫、笑いすぎですよ」
「……ふん」
珍しく沖田が諌めたが、篝は特に反論はしなかった。
「で?虎之助は?何か他に聞いたか?」
寺から屯所に着くまでの間、一言も発しなかった虎之助を若干不思議に思ったのだろう。永倉が聞いてみた。
「…………//覚えてないです」
「はあ?お前の兄の事だぞ?せっかく命がけで行ってきたってのに」
「獣の、胸が柔らかかった事と、あと意外にもいい匂いがしました……//」
「は?」
「……は?」
永倉と沖田が同時に反応する。
篝の方を見ると、特に気にもしてないようで髪をいじっている。
「あと髪の毛もいい匂いがします」
「おいおいおいおい、ちょっと待て。虎之助!」
「草むらで押し倒されて……胸を押し当てられて……」
「ちょっと待て!ストップストップ!総司!漏れてる漏れてる!殺気が漏れてる。虎之助、どうしちまったんだお前ェ!」
永倉は虎之助の体をガクガクと揺さぶる。
「俺……惚れちゃいました……」
「えっ?!だ、誰に?ひょっとして……」
「……そこの獣にです……」
そう言って虎之助が指をさした先には、手持ち無沙汰に髪をいじる篝の姿が。
「へぇ……」
その言葉を聞いて、沖田がゆらりと立ち上がる。
その佇まいは、今にも人を斬ってしまいそうだった。
まさかあんなに憎んでいたはずの獣(篝)に……
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