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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十八章 獣は所詮獣

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柔らかい獣?

虎之助の兄、黒崎豹魔が潜伏しているかもしれない廃寺に来た適当組の面子。

意外にも先陣を切って様子を見に行ったのは篝だった。

「それにしてもこの廃寺、本当に人が住んでるんですかね」


「……ほのかに火の匂いがする。人は住んでるよ」


 篝がそう言って鼻をひくつかせる。


「さすが山猫」という言葉が沖田の喉から出かかっていたが、今言うべきではないとやめた。


「……ちょっと見てくるよ。壬生狼は羽織りが目立つし、隠密には向いてない。チビトラも、なんか事情があって行きにくいんだろ」


 そう篝は言う。


 結果的には篝がいてよかったのかもしれない。

 新撰組は目立ちすぎるし、虎之助は兄がいるかもしれないので行けない。


「何か作戦でもあるのか?」


「まぁ見とけって」


 篝はそう言うと、なるべく毛足の長い草むらに飛び移り、身を隠した。


「さすが山猫……姿が全く見えなくなりましたね」


「俺たちも隠れよう、なるべく体を低くするんだ」


 しばらくして、浪人が話しながらダラダラと出てきた。


「虎之助、あん中に兄はいるか?」


 永倉の問いに、虎之助は浪人の中に自分の兄がいないかを探した。


「……いません。もっと近くに寄れれば、話も聞けるのですが」


「なるほど、あいつらが去ったらお前は篝のいる草むらに行け」


「なっ、なんで俺があんな物騒な獣と二人きりに……」


「大丈夫大丈夫、篝もさっき話してくれたろ。あいつは今獣と人間の狭間で戦ってるんだ」


 獣と人間の狭間。


【私は、自分が何者か知りたくてここに来たんだ……果たして私は獣なのか、人なのか】


 虎之助は篝の言葉を思い出した。

 

 何か思うところがあったのか、渋々と言った感じで口を開く。


「……じゃあ行きますけど、俺が斬られたら責任とってくださいよ」


 半ば冗談、半ば本気で、虎之助は永倉に言い放ち、篝のところへ行った。


「チビトラ、どうしてここに?」


「こっちの方が近いからですよ」


「チビトラ!また浪人が出てきた!身を低くしろ!」


 ドサッ!

 ふにゅ!


「しかし豹魔の旦那の酒癖の悪さだけは受け入れ難いな」


「お前はまた首を絞められてたもんなぁ」


「でもいつのまにか火を起こしてくれてるし、飯も用意してくれるし旦那のおかげで生きていけるよ」


「俺たちも旦那の役に立ちたいけど、肩書きがないもんなぁ。新撰組が羨ましいよ」


「よせ、あいつらは人斬り集団だぞ」


 そう言いながらドヤドヤと浪人は廃寺から出て行った。

 飯の調達に行くのだろうか?篝がそう思って下を見た時ーー


「チビトラ?」


「な、なんでいきなりそんな……//獣のくせに柔らかいんだよ!!」


 虎之助がそう話しているのは篝の胸の谷間だった。

 おそらく虎之助の身を低くしようとした時に、篝の胸で虎之助の顔を押しつぶしていたのだ。


「??なんで怒っているんだ?」


「し、知りませんよ//とにかく浪人たちの話は聞いた。……一度永倉さんたちのところに戻ろう」


おや、虎之助のようすが……


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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