なんなんですか、あなたは。
ドンッ!!
鈍い音が響いて、沖田の刀が篝の顔のすぐ横の畳へ突き刺さった。
切っ先は黒髪を数本掠めただけ。
篝の喉にも胸にも届いていない。
「…………」
沖田は無言だった。
刀を握る手が震えている。
自分でも理解できなかった。
何百人と斬ってきた。
人を斬ることに迷ったことなどない。
なのに。
目の前の山猫一匹が斬れない。
「なんなんですか……」
掠れた声が漏れる。
篝はまだ眠っている。
何も知らず、何も気付かずに。
沖田は震える手を見つめた。
刀を握る手。
人を殺してきた手。
その手が。
今だけは言うことを聞いてくれなかった。
「……起きてくださいよ」
誰も聞いていない部屋でぽつりと呟く。
それは挑発でもなく。
怒りでもなく。
願いにも似た声だった。
「こんなの、つまらないでしょう」
篝は答えない。
ただ規則的な、穏やかな寝息だけが続いていた。
「……クソッ、なんなんですか。山猫のくせに!」
* * *
「なんなんですかね、この状況……」
虎之助が荷物を取りに、斉藤が書物を取りに書院に戻った時ーー
「さあ……ただ、二人とも昨夜は穏やかに眠れたのは確かだな……」
二人の目の前には、布団ですやすやと眠る篝と、その少し離れた先で、柱に背中を預け、刀を抱いて眠る沖田が居たという……
今回は篝が寝てたので斬り合いは無しです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




