生まれついての人殺し
「……まぁそれを言うなら俺達も人斬りだぜ?」
「新撰組の方は、容保様のために、果ては京都を守るために働いているじゃないですか。でも人斬りは違う」
人斬りは獣のような目をしてこちらに近付き、後ろを取られたら最後。あっという間に喉元に喰らいつく。
そこに誇りも、正義もない。
生まれついての人殺しです。
「……それが虎之助の兄貴?」
虎之助はコクンと頷く。
「そっか……だからはじめの殺気は平気だったのか。あいつ(はじめ)には誇りがあるから」
「でも何故か……篝さんは沖田さんとは仲良しなんですね」
「ほぁ?」
「篝さんの、あの野獣のような気配が沖田さんの隣にいるといくらか落ち着くんです」
沖田さんが羨ましい。
俺は兄貴を制御できなかったから。
「俺が沖田さんくらい強かったら、何か違っていたんでしょうか」
山から野獣を降ろさせ、髪紐や櫛を買ってあげるほどの仲に。
「本当は兄貴にも、そんなことをしてやりたかった」
そんな平凡なやり取りを。
人間らしい生き方をさせてやりたかった。
「……虎之助はすげえな。篝の殺気が沖田のそばにいるだけで落ち着くとかよくわかるな!」
虎之助は困ったように眉根を下げる。
「……俺は兄貴以外にも、色んな人間を見て来ましたから……自然と身についたのかも」
虎之助はそう言って照れたように首の後ろをかく。
「でもよー、昔はそうでも、今はそうでもないかもしれないぜ?はじめ、聞いてるんだろ」
俺がそう言うと、襖越しにずっと話を聞いていたらしいはじめがヌッと入ってきた。
「……ああ」
「斉藤さん、どうしたんです。おときさんはもういいんですか?」
「あ、ああ……おときはおとめさんと一緒に黒谷に送った」
「そうですか……」
ずっと兄の話をしているからか、虎之助の表情は暗いままだ。
「はじめ、おとめさんの覚え帳を見せてやれよ」
俺がそう言うと、はじめは着物の裾に手を入れた。
「……念のため聞くが、お前の兄の名前は『黒崎豹魔』だな?」
「……!!なんで斉藤さんが兄貴の名前を知ってるんです」
「まぁ落ち着けよ虎之助。はじめが『一度手合わせしたい奴』が載ってる書状が始まりでーー」
俺ははじめが黒崎豹魔に行き着いた経緯、廃寺でならず者達と暮らしている事などを話した。
そしてはじめがおとめさんの覚え帳を虎之助に渡した。
「そ、そんな……兄貴が……そんなことを」
覚え帳には、
『悪い感じは受けなかった。浪人に慕われている様子。黒崎は浪人の世話役』
と書かれていた。
「嘘だ……あの兄貴が誰かの世話を焼くなんて」
俺の兄貴は一度だって他人のために動いたことなどない。
「……斉藤さん、永倉さん」
虎之助の声は震えていた。
恐怖からか。はたまた別の感情からか。
「俺も『壬生詮議組』に入れてください。本当に兄貴が変わったのか、この目で確かめたいんです」
適当組にパーティーメンバーが増えましたね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




