虎之助の過去と篝
今回は少しだけ真面目な話です。何故虎之助は篝に対して冷たい態度をとったのでしょうか。
壬生屯所・斉藤の書院とは別の離れにてーー
「まぁ飲め。酔わないとお前話さないからな」
俺は永倉新八。
篝の脈を測ってから様子がおかしくなった虎之助を、斉藤の書院から引き離したところだ。
「……永倉さんは自分が飲みたいだけでしょう」
「はっはっは!バレたか!」
そう言いながら、俺は虎之助に酒を注ぐ。虎之助はおとめさんと違い、酒がべらぼうに弱いからな。
舐めるくらいの量でいいか。
「……で、篝には何故あんなことを言ったんだ?」
【野獣は所詮野獣。人と共存なんてできないですから】
俺がそう言った途端、虎之助の雰囲気が少し強張った。
「……あの時、篝さんの腕を取った時に、兄の腕を思い出したんです。兄貴の腕も、あちこち傷と、あざだらけだった」
俺はふんふんと聞きながら酒を飲んだ。
「兄貴は毎日のようにあざや傷をつけて、飲んだくれて帰って来た。そのたびに俺が手当てした」
虎之助の兄の話はさわりだけ聞いてたが、思ったよりも深刻そうだ。
「俺が何度諌めても聞く耳を持たないので、ある日俺は兄に懇願したんです」
お願いだからもう生傷を付けて帰るのはやめてくれと。
兄貴が心配だからと。
そう泣きながら頼んだ。
兄貴は少し困った顔をして……
「『虎之助、俺はどうやら人間にはなれねえみたいだ』って俺に言ったんです」
獣は所詮獣。人とは共存できない。
たとえ山を降りたところで、必ず誰かを傷つける。
泣かせる。
わけもなく人を殺す。
その人にどんな家族がいるか。
その人にどんな事情があるかも考えないで。
「篝さんには、兄貴のそれと同じ気配を感じたんです。だから……」
「だから?」
「だから嫌いなんです。人斬りなんて……」
そう言い切った虎之助の瞳には、兄に対する憎悪と、人斬りに対する怒りが見て取れた。
虎之助の兄はそうですが、篝は人間にはなれないんですかね?
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