獣は所詮獣
強い酒を飲んでぶっ倒れた篝を前に、虎之助の放つ声はどこまでも固く冷たかった。
虎之助が放つ声が、驚くほど冷たく、無機質なものになっていく。
「野獣は所詮野獣。人と共存なんてできないですから」
「お、おい。何もそこまで言わなくてもいいだろ。お前、篝と兄を混同しすぎじゃないのか?」
「…………」
「そうですよ。山猫が本当に野獣だったら、山から降りては来ません」
(僕と命がけの試合もしなかったはずだ)
「野獣にも人の心はあると、そう言いたいんですか?」
虎之助が冷たい口調のままで、沖田に詰め寄る。
さっきまで畳におでこを擦り付けんばかりに沖田に謝っていたのに。
「ちょっと落ち着けよ虎之助。お前はこっちで話そう、な?」
篝のそばに虎之助を置いてはいけないと判断したのか、永倉が虎之助を他の部屋へと誘導する。
(篝と虎之助、二人に何があったんだ?)
「かがりお姉様!大丈夫ですか??」
斉藤の膝の上に乗ってずっとこちらの様子を伺っていたおときが駆け寄ってきた。
「おとき、篝は寝てるだけだよ。ちょっと疲れてたところに酒をいきなり飲んだから体がびっくりしたんだろって虎之助が言ってた」
「では、今はただ寝ているだけなのですね。よかった……」
心から安心したようにおときは篝の手を握った。
「…………」
篝は子どものような顔ですやすやと寝ていた。
「……おとき。俺は虎之助のところへ行ってくるが、お前は姐さんと黒谷に帰れ」
「えっ?今来たばかりですのに?」
斉藤がチラッと私の方を見る。どうやら気を利かせて沖田と篝を二人だけにしときたいらしい。
……いいのかこいつらを二人きりにして。
【そうですよ。山猫が本当に野獣だったら、山から降りては来ません】
山猫と馬鹿犬か……人斬りには人斬りにしかわからない世界もあるのかもしれないね。
それに虎之助。
【野獣は所詮野獣。人と共存なんてできないですから】
虎之助があんなにも人に対して冷たい声を発したのは初めてだ。
(……まぁ私が考えなくても、永倉と斉藤がなんとかするでしょ)
「仕方ないね、おとき。今日はもう帰るよ」
「はい!あ……沖田さん!」
「……はい?」
「かがりお姉様をよろしくお願いします」
沖田にそう言って、おときは素直に斉藤と私の言葉に従った。
でも何故かおときの手は斉藤に繋がれていて。
なんだこいつら……
あーあ、私も容保様から贈られたっていう酒を飲みたいもんだね。
虎之助の言う通り、獣は所詮獣なのでしょうか?
最後まで読んで頂きありがとうございました。




