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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十八章 獣は所詮獣

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獣嫌いな虎之助

篝は茶だと思って強い酒を飲んで倒れてしまう。

意外にも医学の知識のある虎之助が脈を診るが……

 壬生屯所・斉藤の書院にてーー


「全く、なんでこんなところに容保様からの贈り物を置いとくかね?」


 私はとめ。屯所では「おとめさん」とか斉藤には「姐さん」て呼ばれてる。


 たった今不用意に容保様の贈り物をその辺に置いといた虎之助を叱ったところだ。


「沖田さんごめんなさい!花札に誘われてそのまま忘れっちまった」


 虎之助が畳におでこを擦り付けんばかりの勢いで謝った。


「……なんで僕に謝るんですか?」


 虎之助がきょとんとする。


 心底わからないという顔だ。


「??……なんでって……沖田さんの前だとこの人穏やかだから、てっきり良い仲だとばかり」


 虎之助の言葉を聞いてみるみる沖田の顔が赤くなった。


「誰がこんな山猫なんかと!!それに僕はいつかこの(かがり)を殺す【つもり】なんですから!」


「篝っていうんですか、その人……」


 虎之助は目を回して布団で寝ている篝を見て呟く。


「そっか、虎之助は獣みてぇな兄の殺気を浴びて育って来たから、そういうのに敏感なんだなぁ」


 永倉がそう言ってうんうん、と頷く。

 獣みてぇな兄??


「永倉さん!!その話はしないとの約束ですよ!」


 永倉はしまったという顔をした。


「悪い悪い。そんで篝の様子はどうだ、虎之助」


 虎之助は元は薬売り。意外にも医学の知識もあって、ちょっとした脈が測れるのだ。

 

 虎之助は篝の腕をそっと取った。


「で、どうなんですか篝の具合は」


 沖田が若干イラつきながら話す。そんなに敵意むき出しにしなくても。虎之助はただ脈を診ているだけじゃないか。


「……うん、大事ないけど。ちょっと今日はいろんなことがあって疲れたみたいだね。その子、普段は屯所にいないんでしょ?」


 虎之助は篝の方を見て話す。


 なんか虎之助、若干声が冷たくなってない?


「大体のことは見たらわかります。野良着みたいな無頓着な着物に、最近買ったような新品の髪紐で誤魔化してはいるけど、山育ち特有の獣のような覇気は隠しきれていない」


 篝の服装や髪紐を見て、虎之助は冷静に分析する。


「一応薬は出しておきます。でも早いとこ、落ち着く場所に帰した方がいいんじゃないですかね」


 虎之助……?


 虎之助が放つ声が、驚くほど冷たく、無機質なものになっていく。

虎之助は獣のような兄と暮らしていたので、獣の類いは嫌いです。もちろん獣のような人間も。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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