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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十七章 山猫は人に懐くもの?

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誰かのために。

 刀屋にてーー


「この刀が良さそうです!」


 そう言っておときが指したのは、勝色(かついろ)と言われる濃い藍色の黒漆の鞘に覆われた刀だった。


「お、おいおい……この真剣をお前が持つのか?私はてっきり小刀かなんかかとばかり……」


(……師匠にあげるんです。いつもお世話になってるから)


 おときは小声で篝に耳打ちする。


「扱い慣れてない刀でも部屋に飾ってればかっこいいでしょ??師匠の部屋は殺風景だから」


 そう微笑むおときに、篝の胸が何故か熱くなった。


(このチビ、自分のためじゃなくて『他人のため』にここまでするのか?……一体なぜ?)


 街には危険がいっぱいなのに。


 私は自分の身は自分で守れるし、自分のためにしか動かない。


 でもこのチビは……


 いや、このチビだけじゃない。黒谷の人たち、敏姫様やおとめさん。容保様。


 みんな他人に優しくして、見返りは何も求めない。


 一体なぜ……??


「待て」


 その時おときの頭上から、斉藤の野太い声がした。


 おときは慌てた。


「し、師匠!これは違うんです。ただ見ていただけで、師匠への贈り物だとかは思ってなくて……」


 慌てすぎて、斉藤に隠していた事を自らペラペラ喋ってしまった。


「なんだ壬生狼、刀一つ買うのも待てねぇのか?せっかく二人で選んでたのによ」


 篝がそう言うと、おときは篝の背中に隠れてしまった。


(おチビ……ひょっとしてこのデカい壬生狼が怖いのか?)


 この状況は前にもあった。確かあのときは、このデカい壬生狼にチビは問答無用で首根っこを掴まれてどこかに運ばれて行った。


 ひょっとしてこのチビに酷いことをしてるのか!?

 一週間メシ抜きとか!?

 このデカい壬生狼が!?


 想像した瞬間、篝の中に怒りが湧く。


 チビはこんなに可愛い子なのに。


(だから壬生狼(みぶろ)は嫌いなんだ!)


篝は自分が生きるのに必死で誰かのために何かをしようと思ったことなどありません。

でもこの時代においてはよほど自分に余裕がない限り、篝のような人の方が多かったと思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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