篝の無防備とおときの無防備
おときから預かった文を届けるために篝の庵を訪れた沖田。
沖田を出迎えたのは、篝のあまりに無防備な格好だった。
それを聞いておときの顔がぱっと明るくなる。
「わぁ〜ありがとうございます!沖田さんてお優しいんですね!」
「……おとき。終わったなら帰るぞ、総司。邪魔して悪かったな」
そう言うと、斉藤はおときの手を握って引き返した。
「……そんなに独占欲むき出しにしなくても平気ですよ……」
沖田は最初から最後まで殺気丸出しだった斉藤に苦笑した。
が、次の瞬間ーー
隊士達が小声で何やら話しをしているのを、沖田は視界の端にとらえた。
浪士達の視線の先には、斉藤と。ーーおとき。
(なるほどね。そりゃ殺気を隠そうともしないわけだ……)
壬生の屯所に似つかわしくない可憐な鈴蘭のような女子。
「……これは一度警戒を強める必要がありますね」
(斉藤さん一人では多勢に無勢かもしれないし)
沖田はおときに渡された文の感触を懐に確かめた。
* * *
場所は変わってここは篝の庵ーー
「どうした馬鹿犬、また負けに来たのか?」
複雑な想いと、おときから預かった手紙を懐に入れた沖田を。
艶々の黒髪をまだ紐で結んでいない無防備な篝が出迎えた。
「…………」
「……?どうした馬鹿犬。馬鹿みてーなツラして」
「山猫。いくらここが安全で、僕しか知らない隠れ家だとしても少しは警戒した方がいいんじゃないですか?」
「???何故だ?」
沖田は篝の無防備な長い黒髪と、動きやすいように切ってある着物の裾から見える白い脚を見た。
「……ハァ……」
でも山猫はおときさんじゃないしな。おときさんは無防備だが、篝の無防備さとはだいぶ違う。
ーーおときさんには誰かが守ってやらねえといけねえ危うさがある……
「……なんでもないです。今日はあのおときさんから文を預かったから」
「えっ?おときってあの時のチビ?」
篝は櫛屋に入ってきて、やたら一生懸命だったおときのことを思い出した。
「山猫に読んでほしいみたいですよ」
篝は沖田の顔と文を見比べていたが、やがて。
「文なんてもらったの……初めてだ」
沖田から文を受け取ると、篝は恐る恐るといった感じで読み始めた。
沖田は篝の隣に座って、当たり前のようにその髪を梳きはじめた。
『かがりおねえさまへ
黒谷でのときから
おともだちになりたいと思っていました。
かがりお姉様は、すごくかっこいい方で私の憧れです。
ぜひもう一度、街に降りて私と遊びに行きましょう。
あとこれは師匠には内しょですが、師匠にも何か買ってあげたりです。かがりお姉様にえらんでもらりたいです。
ときより』
最後の方は添削されてない……きっとあのでかい壬生狼に読まれる前に慌てて書いたんだ。
これは何だ??胸の奥がじんわりと暖かくなっていく。
「おい馬鹿犬」
「なんです」
「このチビのいる所に行きたい。案内しろ」
「……構わないですが」
沖田はあの隊士たちの、おときを見る目つきが気になった。
「篝、少し過保護になってもいいですか?篝には不服かもしれませんが……」
「一体なんだってんだ?」
「おときさんを守るためです」
おときは本当に危なっかしい。汗
それは過保護にもなりますよ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




