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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十七章 山猫は人に懐くもの?

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僕だけが知ってる

場所は変わってここは壬生屯所の道場。

沖田は篝に勝つために演習をしていた。そこへ、ピリついた殺気を感じ……

 壬生屯所・道場にてーー


 バシッ、バシッ、バシッ!


(もっと強くならなくては。篝には到底勝てない……)


 沖田は朝から道場にて一人で稽古していた。


 その時だった。


 ピシリ、と。


 見えない刃が抜かれたような気配が走る。


 部屋の空気が重くなる。


 これは殺気だ。


 不逞浪士が紛れ込んだのか?と、沖田は鯉口をきり身構えた。


 殺気は襖の向こうから感じる。押し殺しているつもりでも沖田にはわかる。


 ーー相当な手練れだ、と。


 ピシ、と空気が張り詰め、まさに殺気がこちらに向けて放たれたその時ーー


「沖田さん、沖田さん!」


 え……


「沖田さん、修行中のところごめんなさい。ちょっとだけ頼みごとを聞いてくださいませんか?」


 おときさん?という事は今の殺気はーー


 ガラッと襖が開いた。


 そこにいたのは廊下にちょこんと正座するおときさんとーー


「……なんだ斉藤さんでしたか。殺気を感じたので思わず抜刀するところでしたよ」


 まるで鈴蘭のように無害な雰囲気を放つ小柄なおときさんの後ろで腕組みをして殺気を放つ初代熊ーー斎藤一。


 これが新撰組三番隊組長。


 沖田は目の前の珍妙な光景に思わず吹き出しそうになった。


「……朝から笑わせないでくださいよ。なんですかその光景は……」


「沖田さんすみません。これをかがりお姉様に届けて頂きたくて」


 おときから手渡されたのは一通の花柄の文。文からはお香の匂いか、ほんのりといい香りがした。


「……これは?」


「かがりお姉様に渡して頂きたいのです。かがりお姉様の隠れ家をご存知なのは、沖田さんだけなので……」


「…………」


 そういえばあいつ、隠れ家の場所を僕以外に教えてなかったな。

 確かにあの場所、見つけるのは難しそうだけど……


『沖田さんだけなので』


 あの場所を知っているのは沖田だけ。という事実が何故か胸を締めつける。


「……渡しておきます」


 沖田はそう言って懐に文を入れた。


篝の庵を知っているのは沖田だけと聞いて、沖田は浮き浮きを隠しきれません。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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