誰と誰が夫婦だって!?
篝は細工菓子の美しさに感動していた。とめに促されて一口かじる。
そこへ当然のように沖田がやってきて……
「ひとくち食べてみな」
とめに促されて、篝は意を決したように一口かじる。
「…………」
「どうだい?」
「……花だ」
「花じゃないよ」
「花みたいだ」
篝の頬がほんのりと染まり、その顔は少しだけ嬉しそうだった。
「でも意外ですね。山猫が花に興味があるなんて。あの庵の周りの菊も、単なる目眩し用と思ってましたよ」
いつのまに来たのだろう。沖田がズカズカととめと篝の間に入ってきた。
何故か当然のように篝の隣に座る沖田。
とめは嫌な予感がした。
「……どうしたんだ沖田。今日は篝がいるから護衛は必要ないよ」
とめのその言葉に、篝が何故かドヤ顔で胸を張る。
「そうそう、野良犬は大人しくそこらの警備でもしてろ」
「……山猫がこの間僕が選んだ櫛を着けているか気になってですね。間違えて櫛で人を刺したりでもしてたら夢見が悪いじゃないですか」
そう言われた篝の髪には、沖田が選んだ髪紐と、黒檀の櫛がさされていた。
「んだとぉ?いくら私でも櫛をそんな使い方しねぇ!」
(あー始まった!沖田と篝の夫婦喧嘩。せっかく今日はまったりと過ごせると思ったのに)
とめは頭を抱えた。
「……でも篝は素直に両方とも着けてくれてるじゃないか。本当は嬉しいんじゃないのかい?」
とめはなるべく沖田を刺激しないように聞く。
篝のことになると沖田は何故か過敏になるからだ。
「はぁ?そんなわけないじゃないですか。僕はただ山猫が櫛の使い方を忘れてないか見にきただけです!へし折られても困りますからねえ!」
(やべー、完全に逆効果だったわ)
とめは心の中で天を仰ぐ。
「テメェ、どういう使い方したらへし折れるんだよ!?」
「さぁねぇ?例えば木こりみたいに木を切るとかですかね?」
「どうやったらこんなちっこい櫛で木が切れるってんだよ馬鹿犬!」
などと二人がお店でギャースカやっていると、永倉が飛んでやってきた。
「あれ?お前らだったのか?屯所に茶店で暴れてる夫婦がいるって飛んできたのに」
どうやら誰かが騒ぎを聞きつけて屯所に連絡したらしい。
「誰と誰が夫婦ですか!?」
「誰と誰が夫婦だ!?」
「なるほどな!お前らなら納得だ。はっはっは」
永倉の豪快な笑い声を背に、いつのまにかとめは茶店を後にしていた。
「さて、沖田が来てめちゃくちゃになったし。私は敏姫様への贈り物の改めでもしようかねぇ」
時刻は八つ時、おとめはひとつ伸びをして黒谷に戻った。
この二人は今後どうなっていくんですかね。
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