絶対病気だと思ったのに
新しい病気に罹ったのではと一人で焦る敏姫様。薬師に「恋だ」ときっぱり言われて戸惑うが……
薬師の言葉に恥ずかしくなったのか、姫様は布団で顔を隠してしまった。
「これら全てが恋による症状です。よかったですね、敏姫様。いや〜私にも昔ありましたなぁ……」
「薬師様、ありがとうございました」
薬師が自分のことを語り始めたので私は慌てて部屋から薬師を追い出した。
「……姫様、どうでしたか?私の言った通り心配はなかったでしょう?」
「…………」
私は姫様がまだ顔を隠している布団に話しかけた。
「新しい病気じゃなくてよかったですね……」
「ぅ、ぅ……//絶対に病気だと思ったのに、ここここ恋??恋ってあの……恋?」
(恋……そんな大層なものが、私に……?本当?)
「そうです。何も恥ずかしくないですよ。男女なら当然抱く感情ですから」
姫様がそろそろと布団から目だけを出した。
「……そんな診断をされたら……//殿に会った時にどうしたらいいかわかりませんわ」
「??今まで通りの態度でいいじゃないですか」
その時、俄かに廊下が騒がしくなった。
「か、容保様!」
「一体何用で……」
「あんなに慌てて、どうしたのかしら?」
「敏姫様のお部屋に向かわれたわ!」
……容保様だって?
これはちょうどよかった!今姫様が一番会いたいお人じゃないか。
「姫様!容保様がお越しになったようで……す?」
ふと見ると、敏姫様は今度は顔だけじゃなくて全身すっぽりと完全に布団の中に隠れてしまっていた。
「とめ!殿には敏はいないって言って!」
布団の中から姫様の声が聞こえる。
「なんですと?だってあんなに会いたいっておっしゃっていたのに……」
「だって今は化粧もしてないし、髪も整えてないし、殿にいただいたかんざしも付けてないもの!//こんな姿では恥ずかしくてお見せできません//」
…………
困った。私はあくまで一介の下働きの女。
容保様にも、姫様にも逆らえない。と、その時ーー
「……敏?大事ないか?」
姫様の部屋の襖越しに、容保様のお姿が見えた。
私は黙って容保様を部屋に通す事しかできなかった。
(姫様ごめんなさい。頑張ってください!)
私は心の中で姫様に謝罪し、襖を閉めたのだった。
容保様はそんなこと気にしないと思うけどな……
最後まで読んで頂きありがとうございました。




