罰は算術
篝と沖田とおときはまだ櫛の金勘定で揉めていた。
と、そこに空気を変える、研ぎ澄まされた刀のような殺気が店中に広がった。
見えない刃が張り詰めたような感覚がした。
殺気だ。
怒鳴り声でもない。
抜刀でもない。
静かなまま、それはこちらに歩いて来た。
(何モンだ……!?)
篝は咄嗟におときを自分の背中に隠す。
沖田も腰の刀に手を置く。
「……おとき……」
それは一瞬だっただろうか。それとも一時間だろうか。長いとも短いとも言えない沈黙が流れた。
やがてーー
「なんだ……斉藤さんか……おときさんはここにいますよ」
その瞬間、先程まで店中に漂っていた血の気配がなくなる。風景が戻る。どんよりとしていた空気に光が入る。
(えっ?なんだ、この……)
篝の背中からおときが恐る恐るという感じで声を上げる。
「し……師匠。今日は……外せないお仕事のはずでは……」
篝の着物の裾を握ったまま、おときが顔を少しだけ覗かせる。
「……観念した方がいいですよおときさん。もうバレてますから……」
その時。
店に入って来た斉藤と、篝の背中で小さくなっているおときの目が合う。
「……おとき、今日は一日中黒谷に居ると言ったのに……」
「はわわわわわわ……ごめんなさい師匠!どうしてもかがりお姉様と仲良くなりたかったんです!」
「えっ?私と?」
篝が目を丸くしておときの方を見る。
(私と仲良くしたいなんて初めて言われた……)
「……言い訳は屯所で聞く。篝。総司、すまなかったな」
そう言って斉藤は、篝の背中に隠れようとするおときの首根っこを掴んであっという間に肩に担いだ。
「……別に斉藤さんが謝ることでも無いと思いますけど……」
沖田が呆れたようにため息を吐く。
篝はよくわからないまま呆然としていた。
「いやぁぁあ!!算術はいや!!誰か!かがりお姉様!おとめお姉様!助けて!!」
おときの悲鳴が街中に響き渡った。
斉藤さん、おときに罰として算術をさせているんですね。
ところで何の罰なんですかね?汗
最後まで読んで頂きありがとうございました。




