虎之助の荷車に?
相変わらず殺気を無意識に振りまいていた斉藤だが、一人の隊士の言葉を聞き、様子が変わる。
「す、すみません。一寸いいですか?」
一人の浪士が恐る恐ると言った感じで手を挙げた。
「……なんだ?」
こちらを睨む土方に、浪士が言いにくそうに声を絞り出す。
「会議の前、酒売りの虎之助を見かけたんですが……」
「虎之助がどうした?」
永倉が浪士の方を見る。
「『荷車に娘が潜り込んでた気がする』って言ってたんですが……もしかしておときさんじゃないですか?おときさんは小柄だし、あり得ます」
「…………」
部屋中の空気が止まった。
そして。
ギシッ。
斉藤が立ち上がる。
「はじめ?」
「……局長。申し訳ありません」
その目が完全に据わっている。
「……俺は今から京都中を探してきます」
「待て待て待て!!」
永倉が慌てて止める。
「落ち着け!!まだおときさんとは限らねぇだろ!?」
「…………」
斉藤が無言で永倉を見る。
怖い。
とにかく怖い。
「怖えよ!お前、顔が完全に『斬る顔』なんだって!!」
土方は咳払いを一つした。
「とりあえずはじめは落ち着け。おときさんと決まったわけじゃねえ。もし仮におときさんだとしても、闇雲に探すのは効率が悪い。まずは状況を整理しよう」
「…………」
斉藤は黙って座り直したが、その殺気は先程よりも増していた。
* * *
一方その頃街ではーー
「山猫にはこの櫛なんか絶対似合わないですね」
そう言って沖田が差し出したのは桃色の花が装飾された可愛いらしい櫛だった。篝には絶対似合わない。
「お前真剣に選ぶ気ないだろこの馬鹿犬!」
「冗談ですよ、冗談」
(わぁ〜なんかいいなぁあの二人。お互いの好きなものをわかってる!)
斉藤らの心配をよそに、なんだかんだ言いながら買い物を楽しんでいる沖田と篝と、それを見て羨ましがるおときがいた。
おときと斉藤の温度差よ笑
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