ある日の壬生屯所ーー二人の答え
斉藤はときの誤字だらけの可愛いらしい文を読んで、あることに気がつく。
この文も誤字だらけだった。だがーー
『真珠の櫛』
これだけは間違えていなかった。この前まで『櫛』を『串』と書いていたのに。
こんなに難しい漢字を。
そして何よりこの可愛いらしい文を。
一生懸命に練習して、斉藤に向けて文を書くおときの姿が目に浮かぶ。
「……師匠??」
黙りこくった斉藤の様子を見て不安になったのか、おときは顔を覗き込む。
「……おとき……」
「はっ!はい!じゃなかった!なんですか!」
そう言って慌てて顔を背けるとき。私は拗ねているんだぞ感を必死に出そうとしている。
「……よく書けている……」
「えっ……?」
「少し間違えてはいるけど気にはならない」
嘘だ。でも今は、おときの努力を認めたい。
斉藤に向けて書いた。難しい漢字も練習した。
斉藤に買ってもらった櫛を枕の下において、いつも寝ているというおときのいじらしさ。
その全てが……
「ししょ……」
気付いたら斉藤はおときを抱きしめていた。
「……おときを煩わしいと思ったことなど一度もない……あれは心配だとか、そういう意味で言ったのだ」
「!?そ、そんなの信じられません。きっと師匠もみんなと同じで……」
おときが少し斉藤の腕の中で身じろぐ。
斉藤はそのぬくもりを離したくなくて、少し腕の力を強めた。
「……!」
「……俺はいつでも、おときを想っている……」
「師匠……」
やがて腕の中のおときから力が抜けるのがわかった。
「……なんだ。師匠も同じ気持ちだったんですね……」
斉藤の腕に頭を乗せて、ときは続ける。
「師匠も眠る時も、私のことを考えているんですよね?」
「…………ああ」
二人の間に柔らかな風が吹く。
斉藤とときの手はどちらからというでもなく握られていたーー
* * *
後日「壬生詮議組」もとい「馬鹿二人と馬鹿犬」が召集され、「おときがなぜ屯所に侵入できたか」
の話し合いがされたが、永倉は馬鹿馬鹿しいと早々に放棄し、なぜか土方にバトンタッチ。
とめは「またどうせ斉藤が何とかするんだろぉ〜?おときのことになると必死になるんだから」
と相手にせず。
沖田は「かがりと試合があるから」と浮かれて篝の元へ通い。
結局ときの侵入方法は謎のまま終わったのである。笑
おときの大冒険はまだ続きます。笑
最後まで読んで頂きありがとうございました。




