ある日の壬生屯所ーー斉藤の受難
おときを純粋に心配する斉藤。
そんな斉藤の気持ちも知らないおときは、斉藤に煩わしいと言われたことを気にしていた。
「師匠!おろしてください!」
壬生屯所 斉藤の書院にてーー
「……降ろすが、このまま降ろすと怪我をする」
そう言うと斉藤は、肩に担いでいたときを横抱きにして、そっといつもの文机の前に降ろした。
「……それで?どうやってここに入ってきたんだ」
「師匠には秘密です!」
ツーンとこちらに顔を背けたままのとき。
斉藤は頭を抱えた。
(まずい……侵入経路を知っておかなければ、ときはまた屯所に入ってきてしまう……今日はたまたま俺がいたからいいものの……)
あの時の浪士達の飢えた狼のような目。
俺や新八がいなければときは今頃……
考えて、ゾッとして、慌てて斉藤は頭を振った。
「……ここには、文を返してもらいに来たんです。間違えて渡しちゃったから……」
「……ああ、知ってる。姐さん宛てだったな」
「読んだんですか!?//間違えたのに!!」
「……渡されたからな」
斉藤は真面目な男だ。
「それで、代わりに渡そうとした文があるのだろう?」
「えっ?」
斉藤に言われて、ときは一瞬きょとんとする。
(わ、忘れるところだった!師匠が私を煩わしいだとか言うから……)
ときは慌てて帯にさして持って来た文を斉藤に渡す。
「こっ、これです//でもその前におとめお姉様に宛てた文を返してください!あれはおとめお姉様に渡そうと思ったもので……」
「ダメだ。誤字だらけだったからな」
「うぐ〜!!」
斉藤は未だに拗ねているときを無視して、渡された文を読んだ。
『ししょうさまへ
りつもあいがとうござります。
ししょうさまがくれた真珠の櫛を
枕の下において寝たら
夢にししょうさまが出てくれて
私はよくねむりました。
ときより』
「…………」
斉藤は真面目だから面白い。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




