僕が選んだもの
店主が出して来た髪紐は、どれも雅な品ばかりだった。おとめが篝の黒髪に当てて迷っていると……
「全て正絹で作っております」
(しょうけん?刀の種類か?)
篝が正絹という言葉を聞き、首を捻った。
篝は黒谷に降りてくるまで、よっぽど世間から離れた生活を送ってきたんだろうと肩をすくめた。
「まあまあ、それはありがとう。ほら、篝見せて」
うーん、篝にはこの色かなぁ?でもこの黒も捨てがたいんだよね。銀糸が入ってるから篝の大人っぽさをさらに引き立てるというか……
「待ってください」
私が篝の髪に紐を当てて迷っていると、突然沖田が声をあげた。
「……僕が選びます。山猫には何が似合うか、殺し合いをして分かっています」
いきなり物騒!!しかも何その理屈!!店主もビビってるじゃないか。
篝はというと、「店で騒ぐな」という私の言葉を守っているのか、沖田の言葉に反論しなかった。でも殺気はやばいくらい滲み出てる。笑
「……そうですね。山猫には……」
沖田はそう言って、髪紐を選ぶふりをして篝の髪に触れた。
(えっ?何これは……)
篝の黒髪を、沖田がなぞっている??
そして篝は、沖田のその行為を受け入れているだと?
いつもならここで篝が沖田の手を振り払って、喧嘩が始まるのに……
「…………」
「…………」
無言で見つめ合う二人。
二人の交わす視線には、殺意か、愛情か、憎悪か、殺気かよくわからない感情が入り乱れていて。
……私お邪魔かしら。帰った方がいい?
「……篝にはこの色が似合います」
そう言って沖田が出してきたのは一番品のある濃い紫の髪紐。
(しかも一番高い……)
「……まぁ殺し合いをしたもん同士、何が似合うかわかってんならそれで良いんじゃないか??」
篝がそう言って仕方なさそうな感じを出して沖田から髪紐を受け取る。
な、なんだこの二人。静かにしても会話が物騒すぎる。
「……じ、じゃあそれを頂こうかね?」
私がそう言って店主に金を払おうとした時、沖田がその手を止めた。
「僕が払います。僕が選んだものなので」
「あんだと馬鹿犬!てめえに借りを作る気はねぇぞ!」
それまで大人しくしていた篝がついにブチギレた。
篝は髪を梳いてもらっている間はおとなしいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




