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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第一章 奇跡が起こった夜

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姫さまの初恋

昼間のデートが忘れられない敏姫様は、容保様に会いに行っていた。そこへ容保様が現れて……


※とめ視点です。

途中から敏姫様の独白です。

「……こんな気持ちは、初めてです。敏は、おかしいのでしょうか……//」


 そう言って姫様は潤んだ瞳で上目遣いをする。

 目に見えて容保様の顔が赤く染まっていくのがわかった。

 いやそりゃそうでしょうよ!!姫様いつのまに覚えたのそんな技!


「……敏……お前は……」


「……???」


「……可愛いな……」


「うぇぇっ!?//」


 姫様の素っ頓狂な声を聞いた私は吹き出してしまった!


 一国の!一国の姫様が!「うぇぇっ!」って反応!聞いたことない。しかもなぜかそれでも可愛い!


「……驚いたのか。私も……まさかこんな言葉を口にするとは思わなんだ」


 容保様はそう言って、わずかに口元を緩め、口元をおさえた。か、容保様がまた笑った!


 なんだこのおふたり〜!!もう見てられない!


「……殿……」


 容保様が口元を緩めたそれだけで、空気がやわらぐのを感じた。


「……少し、歩くか」


「……はい」


 二人は並んで歩き出す。


 触れそうで、触れない距離で。

 けれど、さきほどよりもずっと近い距離で。


 お二人は時々見つめ合っては、姫様が恥ずかしそうに目を逸らして。


(まるで恋したての二人じゃないか)


 私は二人を見ていて、自分が感じていた恥ずかしさの正体が分かった気がした。


 お二人は初恋同士なんだ。


 政略結婚ではあったけども、そうか……こんな恋の形もあるのか。


 ふと姫様の小指が、容保様の手に触れる。

 姫様が慌てて隠そうとしたそれを掴んで、容保様が優しく包む。


 それは今日の帰り道に見たものと同じ光景でーー


(なんでもいいか。姫様が幸せなら)


 ずっと味わえなかったであろう恋のときめきを。


 普通の人ならとうに経験済みのことも。


 普通に街を歩いて。

 かんざしを贈られることも。

 甘いお菓子の味も。

 お茶の味も。

 何気ない会話も。手を繋ぐことも。


 どれも数日前の姫様には叶わなかった。


 今姫様は、叶わなかった当たり前のことを……

 噛み締めているんだ。


 姫様はまた容保様の方を見る。

 今度は、顔を背けなかった。


「……敏……」


「はい……」


(私は知りませんでした)


 最初はただの政略結婚だったかもしれないけれど。


 私は殿のことが好き。


 だって、殿を想うだけでこんなにも胸が熱くなるんだもの。


 好きな人がいるってこんな感じなんだ。


 甘くて、切なくて、いつでもどこでも会いたくなって……


 好きなお方と同じ時間を過ごすだけで。


 ただ、一緒に歩くだけで。


 こんなにもーー

どうやら敏姫様はこの気持ちが何なのか気づいたようです。

数日前には確かに味わえなかった淡い気持ち。

大事にしたいですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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