姫さまの初恋
昼間のデートが忘れられない敏姫様は、容保様に会いに行っていた。そこへ容保様が現れて……
※とめ視点です。
途中から敏姫様の独白です。
「……こんな気持ちは、初めてです。敏は、おかしいのでしょうか……//」
そう言って姫様は潤んだ瞳で上目遣いをする。
目に見えて容保様の顔が赤く染まっていくのがわかった。
いやそりゃそうでしょうよ!!姫様いつのまに覚えたのそんな技!
「……敏……お前は……」
「……???」
「……可愛いな……」
「うぇぇっ!?//」
姫様の素っ頓狂な声を聞いた私は吹き出してしまった!
一国の!一国の姫様が!「うぇぇっ!」って反応!聞いたことない。しかもなぜかそれでも可愛い!
「……驚いたのか。私も……まさかこんな言葉を口にするとは思わなんだ」
容保様はそう言って、わずかに口元を緩め、口元をおさえた。か、容保様がまた笑った!
なんだこのおふたり〜!!もう見てられない!
「……殿……」
容保様が口元を緩めたそれだけで、空気がやわらぐのを感じた。
「……少し、歩くか」
「……はい」
二人は並んで歩き出す。
触れそうで、触れない距離で。
けれど、さきほどよりもずっと近い距離で。
お二人は時々見つめ合っては、姫様が恥ずかしそうに目を逸らして。
(まるで恋したての二人じゃないか)
私は二人を見ていて、自分が感じていた恥ずかしさの正体が分かった気がした。
お二人は初恋同士なんだ。
政略結婚ではあったけども、そうか……こんな恋の形もあるのか。
ふと姫様の小指が、容保様の手に触れる。
姫様が慌てて隠そうとしたそれを掴んで、容保様が優しく包む。
それは今日の帰り道に見たものと同じ光景でーー
(なんでもいいか。姫様が幸せなら)
ずっと味わえなかったであろう恋のときめきを。
普通の人ならとうに経験済みのことも。
普通に街を歩いて。
かんざしを贈られることも。
甘いお菓子の味も。
お茶の味も。
何気ない会話も。手を繋ぐことも。
どれも数日前の姫様には叶わなかった。
今姫様は、叶わなかった当たり前のことを……
噛み締めているんだ。
姫様はまた容保様の方を見る。
今度は、顔を背けなかった。
「……敏……」
「はい……」
(私は知りませんでした)
最初はただの政略結婚だったかもしれないけれど。
私は殿のことが好き。
だって、殿を想うだけでこんなにも胸が熱くなるんだもの。
好きな人がいるってこんな感じなんだ。
甘くて、切なくて、いつでもどこでも会いたくなって……
好きなお方と同じ時間を過ごすだけで。
ただ、一緒に歩くだけで。
こんなにもーー
どうやら敏姫様はこの気持ちが何なのか気づいたようです。
数日前には確かに味わえなかった淡い気持ち。
大事にしたいですね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




