庵から戻った沖田
前回(ep.135)、おとめには内緒で篝は自分の住んでいる場所の地図を沖田に渡した。
篝が住んでいる場所は思いのほか入り組んでいた。
壬生屯所ーー練習場にて。
バシンバシンバシン!!
殺気を隠そうともしていない沖田が藁束に向けて木刀を振り下ろしていた。
演習というより八つ当たりに近かった。
(クソ、クソ、クソ……ッ!あの山猫め!)
ーー数時間前、沖田は早速篝の描いた地図を頼りに、篝の庵を訪れていた。
「……まるで隠れ家だ。」
石と石の隙間を何とか身を捩って通ると、紫の菊が鮮やかに咲き乱れていた。
よく見るとその中に紫陽花も咲いていた。
花などはあの山猫に一番不似合いのはずなのにーー
沖田は菊の庭を抜け、篝がいると思われる庵を見た。
(あの山猫、本当に最低限雨風が凌げたら良いんだな。この庵なんてほぼあばら屋)
沖田がほぼ襖としては機能していない襖を開けるとそこにはーー
少し着崩れた藍色の野良着のような着物。歩きやすいように裾を絞ったせいで、その生脚が顕になった無防備な篝が大の字になって寝ていた。
「なっ……//」
沖田は慌てて襖を閉めた。
山猫の意外にも白くて綺麗な脚が、頭から離れない。
「……せっかく手合わせしに来たってのに」
「……その声は馬鹿犬か?本当に来たのか!」
沖田に気付いた山猫ーー秋月篝があくびをしながら襖を開ける。
「いい酒を飲みすぎてね、おかげでよく眠れたよ」
そう言う篝は艶々の黒髪は今日はまとめておらずそのままにして、着物の前もだらしなく緩んでいた。
「……せっかく来たってのに……」
「ああ、悪い悪い。準備してくるよ」
(クソ……何だあの山猫。あれって絶対に天然だよな)
* * *
準備が整った篝は、先程のような危うい色気は無く、髪も乱雑に縛られていた。
代わりに沖田が来たことが影響したのか、その体にはすでに殺気が漲っていた。
その様子に、沖田はいくらかホッとした。
(やはり山猫はこうで無くては)
「……次は負けませんよ」
篝は木刀を肩に担ぎながら、紫の菊が揺れる庭へと出た。
夕暮れの光が、山奥の庵を赤く染めている。
「……始めるか、馬鹿犬」
「今日は絶対勝ちます」
沖田は木刀を構える。
だがその目は、黒谷で戦った時より遥かに鋭かった。
遊びではない。
今度こそ、この山猫を叩き伏せる。
その執念だけで立っている。
「へぇ……いい目になったじゃねぇか」
篝の口元がニヤリと歪む。
「最初からそれなら、少しは楽しめたのによ」
次の瞬間。
沖田が地を蹴った。
この二人は試合というより本気の斬り合いをした方がコミュニケーションが取れるんですかね?(聞くな)
次回は多分バトルシーンになると思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




