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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十四章 山から降りた山猫

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野生の獣

おとめは篝の見事な黒髪を褒め、近藤に贈られた櫛で篝の髪を梳いていた。

そこへ沖田がやってきてーー

「はっはっは、それでそんな身なりなのかい!美人なのにもったいない!」


「私は剣しか知らずに生きてきたもんですから……」


「でも髪は綺麗にしてるじゃないか。どれ、見せてみ?」


 と言うとおとめさんは、適当に縛ってあった私の髪を解いた。


「こんな綺麗な髪をこんなぞんざいな紐で縛ってる女なんて、今時百姓くらいだよ」


 心底もったいないとでも言うかのように、おとめさんは私の髪を櫛でときはじめた。


「これはあんたの言う『壬生狼』の一人からの贈り物の櫛だよ。私に惚れてるんだってさ」


 全くどこがいいのかねぇ?と言いながら私の髪をすく。その手つきがすごく優しくて……


「……私の髪は、母の遺伝だと思います……」


 こんなこと誰にも話したことないのに。おかしいな。おとめさんには何故か話してしまう。


「へぇ!それじゃお母様もこんなに綺麗な黒髪だったのかい!」


「……そんなにこの髪を褒められたことないですよ。私はただ、動きやすかったらそれでいいと思ってたんで……」


「はっはっは!本当にもったいないねぇ!」


 ーーと、そこへ。


「……へえ。髪は見れるじゃないですか。髪は」


 気配はなかったが、この喋り方。これは『壬生狼』ーー沖田総司だ。


「ちょっと沖田!女子トークに水を差すんじゃないよ」


「誰が女性ですか?おとめさん?それともそこの野生の獣ですかねぇ?」


「ああ?誰が野生の獣だ馬鹿犬」


 顔を挙げた視線の先には、先ほど試合をして、私に負けた男ーー沖田がいた。


(……!この女、髪をおろしてる……)


 何故か沖田は驚いており、赤くなった顔を逸らしたように見えた。


 は、私に負けただけじゃなく酒も弱いってか?


「……狼でもねえな。お前は負け犬だ。私に負けたんだからな」


 その途端、沖田の目つきが変わった。人斬りの目だ。


「…………かがりさん、僕に喧嘩売ってます?」


「わーわー!やめやめ!ここは黒谷だよ。刃傷沙汰は御法度!!それに沖田は土方さんに簡単に抜刀するなって教えられただろ!?」


 おとめさんのその言葉にハッと目が覚める。

 

 そうだ。ここは黒谷だ。 


 いくら『壬生狼』が相手でも、感情的になってはいけない。


「……すみません、おとめさん。ついさっきまでこの「馬鹿犬」とやり合ってたもんで……」


「……まだ言うの?それ」


 チャキッと鯉口を切る音が聞こえ、ついにおとめさんの雷が落ちた。


「やめんかぁ!!!!」


沖田と篝、これからこの二人がどうなっていくのか楽しみですね。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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