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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十四章 山から降りた山猫

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山から降りて来た獣

試合が終わってその日の夜ーー


※今回からしばらくまたほのぼのパートです。多分。

 街から離れた岩山に守られ、そのさらに奥の紫の菊に囲まれた質素な庵が篝の住まいだった。


 ずっと前に父母を亡くしてから、以来この隠れ家のような庵で暮らしている。


 篝は、父母が残してくれていたわずかな遺産と、用心棒まがいの何でも屋をやって日銭を稼いでいる。


 家事は壊滅的だったが、時々出来上がった飯とおかずをくれる人がいて、幸いなんとか食っていけていたがーー


 * * *


「沖田を負かせた女剣士に乾杯!!」


 永倉の号令で、黒谷の客間はちょっとした宴会場になっていた。


(……なんで、私がこんなところに?)


 私は秋月篝(あきづきかがり)。今日は会津公の前で試合をして、俸禄をもらってさっさと庵に帰るつもりだったのに、何故かまだ黒谷にいる。


 酒は好きだけど……人は好きじゃねぇ。


 私はなるべく部屋の隅で縮こまっていた。どうやらこの宴会は私が主役らしいけど……


「かがり様!」


 その時机の下から涼やかな声がして、私のあぐらの中に顔があって思わずギョッとした。


 私は心霊系は大の苦手なんだ。


「今日の試合かっこよかったです!よかったら私を弟子にしてくれませんか?」


 小柄な女子(おなご)が私のあぐらからぴょんと飛び出し、目をキラキラさせて私を見つめている。


「……何阿保なこと言ってんだ。そんなか細い腕で何を持つってんだ。おもちゃの剣か?」


 その時、焦ったような、でも同時に安心したような男の低い声が聞こえてきた。


「おとき!ここに来ちゃダメだと言っただろう」


「わぁ!師匠!許してください。かがり様に会いたかったんです」


 こちらに気付いたでかい熊のような男と、ときと呼ばれる小柄な女子(おなご)が目の前で追いかけっこをし始めた。


 てかよく見たらこの熊も壬生狼じゃねえか。


「おとき、お前は成人しているとはいえ酒はまだ早い」


「わひゃ!」


 熊はおときを捕まえるとあっという間に肩に担いでどこかに行ってしまった。


(なんだったんだ……)


獣は人間に懐くものでしょうか。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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