まいにち、あなたをおもっています
盗人が斉藤が新撰組だと気付いた時にはもう遅く、盗人は死を覚悟した。
「し、新撰組……!!」
その言葉を聞いた瞬間、周囲の空気がざわめいた。
盗人は斉藤が新撰組だとわかると、途端に土下座して命乞いをし始めた。
「ゆ、ゆゆゆるしてくれぇ!!ほんの出来心だったんだ!」
斉藤の底冷えするような冷たい声が、盗人の上に落ちる。
その声には何の感情も読み取れない。
「……いや、許さん。お前はよりによって俺の大事なものを傷つけようとした」
盗人の顔が真っ青になり、無意識に歯がガチガチと鳴った。
「……俺の大事な者、おときに触れようとした。その罪、断じて許さん!」
チャキッと盗人に刃を向け、問答無用で斬ろうとした時ーー
「斉藤さん……」
小さなぬくもりが、斉藤の背中を抱きしめてきた。
「私は大丈夫です」
涼やかな声が、初夏の風のように透き通る。
「『まいにち、あなたをおもっています』」
「…………っ……」
その言葉に、すっかり毒気を抜かれた斉藤は刀を納め、代わりに腰に回された小さな手を、確かめるように握ったのである。
* * *
数日後のとある日ーー黒谷のお屋敷にて。
「へえ!そんなことがあったのかい!どおりでときは毎日浮かれて屯所に通ってるわけだ!」
「しかも毎回はじめが迎えに来るしな」
永倉ととめは昼間から酒を飲み、先日の「真珠の櫛事件」を酒の肴に盛り上がっていた。
「あー若いって羨ましいねえ。で?あの二人はいい仲になったのかい?」
ときが若いとは言っても、とめも23歳と大概若かった。
「いや、それがまだ付き合うには至ってないらしい」
永倉の言葉を聞いてとめは思わず酒を吹き出しそうになった。
「なんだいそれは!!」
「不思議な二人だよなぁ〜」
この二人まだ付き合ってないんですよ。
斉藤に至っては「俺の大事なもの」発言してるのにな。
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