真珠の櫛を君に
今回はずっと斉藤とときの甘々デート回です。
甘々と言ってますが、本人たちはまだお互いの気持ちに気付いていません。
会津藩 黒谷のお屋敷・敏姫の部屋にてーー
「ええ!?熊さんとデートですって??まぁ素敵ねぇ……」
そう感嘆の声を上げるのは、会津藩主松平容保様の御正室・敏姫様。
この度敏姫付きの侍女の一人、ときが初代熊ーー斉藤と市井に行くと言う。
敏姫はまるで自分のことのように喜んでいた。
「姫様、街にでる許可をくださってありがとうございます」
「まぁまぁ、きちんとお礼もできるようになって。熊さんの教育の賜物ね!」
「はい!」
実は先日、斉藤がときの書いた文の添削をしていた時のことだ。
『あなたがくれたしんじゅの串を』
「……串ではなく、櫛だ。ときにはまだ難しいか?」
「……はい、ときにはまだ文字にするには難しいです」
ときがあからさまにしゅんとする。
(……ときにこんな顔はさせたくないな。ときには笑顔の方が似合う)
「……実際見てみた方が早いか」
斉藤がときのしょげる姿を見てそう呟いた。
「えっ??」
* * *
「わぁ!綺麗!これが『しんじゅのくし』?」
「……違う。それは珊瑚だ。真珠のはこれだ」
そう言って斉藤が見せてきたのは庶民でもわかるいかにも高価そうなものだった。
「ヒェ……」
ときがその値段に小さな悲鳴をあげ、途端にそわそわしだした。
「……師匠、もう出ましょう。くしがどんなものか分かりましたし」
「何故だ?」
ときは恥ずかしそうに目を伏せる。
「……こんな高価なものに憧れていたなんて、自分が恥ずかしいから//」
「…………」
斉藤は何も言わずときが一番感動していた真珠の櫛を手に取る。
「?師匠も真珠の櫛が気になるんですか?」
ときがその様子を見て不思議そうにする。
「まいどあり〜」
お店を出て、初めて呼吸ができるかのようにときは息を吸った。
「ああ〜緊張した!真珠の櫛ってあんなに高価なんですね!」
「……そうだな。ほら、これ」
斉藤は櫛が入った箱をときに渡す。ときは箱と斉藤の顔を交互に見る。
「……?なんですか?」
「……お前はこれをずっと見てただろう。最近ずっと頑張っている褒美だ。受け取れ……」
えっ?えっ?とときは困惑する。
「……ほんとに……これを、私に……?」
ときの目の前には真珠の櫛が入った箱。ぱか、と開くと白くて丸い輝きに縁取られた金の櫛。
「……なんて綺麗……」
ときの瞳からついに涙が溢れ、頬をつたう。
「わ、私は大したことしていないのに……黒谷でもいつも怒られてばっかりで……なのに……ぐすっ」
「……いや、お前は頑張っている。ずっとそばで見ていたからわかる。受け取ってくれ」
「……はい!ありがとうございます!」
ときは涙を拭いながら、斉藤にその日一番のとびきりの笑顔を向けた。
私の幕末はこんなに平和です(笑)
最後まで読んで頂きありがとうございました。




