同じものを、同じように。
容保様に食べさせてほしいとお願いされた敏姫様は……
※とめ視点です。
後半は少し敏姫様視点になります。
「……殿、それは……その……」
頬がみるみる赤くなっていく。
視線は泳ぎ、どうしてよいのかわからない様子だ。
一方で容保様は、まったく悪びれることなく首を傾げた。
「……?いかがした」
(いかがした、じゃないでしょうが!!もー見てるこっちがハラハラする)
私は思わず心の中で叫んだ。
「そっ//それは……殿に、そのようなこと……」
「……だめか?」
その声は静かな声で。でも少し寂しそうに聞こえて。
顔を見ると、少し容保様の眉根が下がっている。
「……っ……」
敏姫は息を呑む。
(そんなお顔をされては……断れるわけが……)
おそるおそる、黒文字にのせた小さな菓子を持ち上げる。
手が、わずかに震えていた。
「……では……その……失礼いたします……」
顔を見られぬよう、ほんの少しだけ目を伏せたままそっと差し出す。
容保様は姫様が掬ってくれた菓子を、そのまま口に放り込んでしまった。
「――っ!」
姫様の肩がぴくりと揺れる。
「……」
二人の間に一瞬だけ沈黙が落ちた。
「……敏の言う通り、うまいな」
容保様はただそれだけ言って、敏姫様に向かってにっこりと微笑んだ。
また微笑んだ!?容保様って笑うんだ?これって結構貴重じゃない?誰か写真撮ってないかな?
「……っ……//」
姫様の顔が一気に赤くなる。
そりゃそうだ。あんな風に微笑まれたら誰だって……
(今、殿は私と同じものを同じように……)
同じものを同じように食べて、「うまいな」って笑ってくれて……
(ほんの数日前には、こんなことできなかったのに)
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
嬉しい……でも。これは想定外です。
「……殿……ずるいです……」
「……何がだ」
「そのようなことを、あまりにも自然に……」
容保様は首を傾げた。
「……夫婦ゆえ、問題はあるまい」
「〜〜〜〜ッ!!//」
私は確信した。
これは溺愛というやつだ!容保様は姫様が病弱だから遠慮していただけで、本当は愛情深い人だったんだ。
じゃないと姫様に向かって微笑んだり、「食べさせてくれ」とか要求しないもの。
(へぇ〜容保様って結構……)
ちらりと二人を見ると、もう一度容保様が姫様に要求したらしい。真っ赤になった姫様がまた菓子を容保様の口元に運んでいる。
その時、また容保様が……
容保様は姫様の手をぱっと握って菓子を食べてしまった。
「と、殿!//もう!敏が食べさせてあげましたのに」
容保様は一瞬言葉を探したようだがーー
「……すまん。我慢できなかった……」
私はとうとう吹き出した。
「あははははは!!もうだめだこの人たち!!」
店の隅で肩を震わせながら、私は思う。
ああ……本当に……
(姫様は、生きているんだなぁ)
湯気の向こうで、二人は並んでいた。
同じものを食べ、同じ時間を過ごしている。
たったそれだけのことがーーどうしようもなく、尊く見えた。
この物語での容保様は愛情表現が豊かです。
可愛いカップルですね。同じものを食べ、同じ時を過ごす。そんな当たり前の事が二人には特別なのです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




