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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第一章 奇跡が起こった夜

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同じものを、同じように。

容保様に食べさせてほしいとお願いされた敏姫様は……


※とめ視点です。

後半は少し敏姫様視点になります。

「……殿、それは……その……」


 頬がみるみる赤くなっていく。

 視線は泳ぎ、どうしてよいのかわからない様子だ。


 一方で容保様は、まったく悪びれることなく首を傾げた。


「……?いかがした」


(いかがした、じゃないでしょうが!!もー見てるこっちがハラハラする)


 私は思わず心の中で叫んだ。


「そっ//それは……殿に、そのようなこと……」


「……だめか?」


 その声は静かな声で。でも少し寂しそうに聞こえて。


 顔を見ると、少し容保様の眉根が下がっている。


「……っ……」


 敏姫は息を呑む。


(そんなお顔をされては……断れるわけが……)


 おそるおそる、黒文字にのせた小さな菓子を持ち上げる。


 手が、わずかに震えていた。


「……では……その……失礼いたします……」


 顔を見られぬよう、ほんの少しだけ目を伏せたままそっと差し出す。


 容保様は姫様が掬ってくれた菓子を、そのまま口に放り込んでしまった。


「――っ!」


 姫様の肩がぴくりと揺れる。


「……」


 二人の間に一瞬だけ沈黙が落ちた。



「……敏の言う通り、うまいな」


 容保様はただそれだけ言って、敏姫様に向かってにっこりと微笑んだ。


 また微笑んだ!?容保様って笑うんだ?これって結構貴重じゃない?誰か写真撮ってないかな?


「……っ……//」


 姫様の顔が一気に赤くなる。

 そりゃそうだ。あんな風に微笑まれたら誰だって……


(今、殿は私と同じものを同じように……)


 同じものを同じように食べて、「うまいな」って笑ってくれて……


(ほんの数日前には、こんなことできなかったのに)


 胸の奥が、じんわりと熱くなる。


 嬉しい……でも。これは想定外です。


「……殿……ずるいです……」


「……何がだ」


「そのようなことを、あまりにも自然に……」


 容保様は首を傾げた。


「……夫婦ゆえ、問題はあるまい」


「〜〜〜〜ッ!!//」


 私は確信した。


 これは溺愛というやつだ!容保様は姫様が病弱だから遠慮していただけで、本当は愛情深い人だったんだ。

 じゃないと姫様に向かって微笑んだり、「食べさせてくれ」とか要求しないもの。


(へぇ〜容保様って結構……)


 ちらりと二人を見ると、もう一度容保様が姫様に要求したらしい。真っ赤になった姫様がまた菓子を容保様の口元に運んでいる。


 その時、また容保様が……


 容保様は姫様の手をぱっと握って菓子を食べてしまった。


「と、殿!//もう!敏が食べさせてあげましたのに」


 容保様は一瞬言葉を探したようだがーー


「……すまん。我慢できなかった……」


 私はとうとう吹き出した。


「あははははは!!もうだめだこの人たち!!」


 店の隅で肩を震わせながら、私は思う。


 ああ……本当に……


(姫様は、生きているんだなぁ)


 湯気の向こうで、二人は並んでいた。

 同じものを食べ、同じ時間を過ごしている。


 たったそれだけのことがーーどうしようもなく、尊く見えた。


この物語での容保様は愛情表現が豊かです。

可愛いカップルですね。同じものを食べ、同じ時を過ごす。そんな当たり前の事が二人には特別なのです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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