理解が早いおとめ
土方にかんざしを褒められて上機嫌で帰ろうとしたとめだったが、斉藤に呼び止められる。
土方さんにかんざしを褒められて、上機嫌で屯所を出ようとした時ーー
「姐さん、しばし時間をくれないだろうか」
石畳を歩いていると、斉藤が話しかけて来た。こいつが話しかけてくるなんて珍しい。
「なんだい?飲み比べなら後にしてくれ」
「……いや、酒は今はいい。それよりこちらに来てくれ。相談がある」
「????」
* * *
屯所の離れの書院にて、斉藤がことの次第を申し開いた。
「へぇ……その黒崎豹魔ってやつが怪しいから拠点を捜査したと……」
「実際見に行った黒崎の印象を聞きたかったんだが、俺ではまとめきれんでな……」
斉藤が珍しくどうしていいかわからないと言った様子で口を開く。
「まぁ要するにアレだろ、それぞれどう思ったかをあの二人に聞きに行けばいいんだろ?」
「……すまん。頼めるだろうか?」
「任せときな」
いつのまにか永倉と沖田の二人は書院から姿を消していた。
今日は永倉は黒谷に用事はなかったはず。
となると……
「やっぱりここにいた。永倉!」
永倉は屯所の台所にいて、酒のつまみを物色しながら飲んでいるところだった。
前に飲み比べした時に永倉はよくここで飲んでるって聞いたからな。
ここにはつまみがあるし、無けりゃ作ればいい。
寝ようと思えばどこでも寝られるし。
「おとめさん!近藤さんに用があるとばっかり……」
こちらに気がついた永倉が酒を飲んでいた手を止める。
「もう用事は済んだんだよ。それより今日廃寺に行ったんだって?斉藤が感想を聞かせて欲しいってさ」
「ああそのことか……その様子だとはじめから大体のことは聞いてるか」
私は無言で頷く。
「黒崎ってやつが怪しいんだろ?容保様と敏姫様を脅かさないとも限らないって。実際どうなんだい」
「……うーん……浪人たちの話を聞く限り、ちょっと酒癖が悪りぃだけで人間的にあんま悪い感じは受けなかったんだよな」
「ふぅん?」
「黒崎があの浪人たちの世話してやってるみたいな印象だったな」
『悪い感じは受けなかった。浪人に慕われている様子。黒崎は浪人の世話役』
とめは覚え帳にササっと永倉の感想を書いて着物の帯にそれを差した。
「さて、あとは沖田だ」
「えっ、おとめさんもう行っちゃうんすか!?せっかく来たんだから飲みましょうよ!」
永倉がそう言って酒瓶を持ち上げる。
「……そういえばここに来てから何も飲んでなかったねぇ」
ちょっと付き合うか……
土方さんにかんざしを褒められて祝いたい気分だったし。
* * *
その後ーー
「どうしたんだ永倉さんは……」
「台所のものが全部食われてる!俺今日沢庵食おうと思ってたのに!」
「永倉さんが潰れるなんて珍しいな」
酔い潰れ、いびきをかいている永倉の周りを囲んで浪士たちがヒソヒソしていたとかいなかったとか……
おとめさんは有能で順応性が高すぎますね。
黒崎豹魔……一体どんな人間なんですかね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




