かんざし一つで百面相
とめは近藤の部屋に入るなり近藤に詰め寄るが、惚れた女を前にした近藤は真っ赤になってしまった。
「近藤さん!私に贈り物は結構ですって言ったでしょう!?」
とめは局長の部屋に入るなりそう言ってすごんだ。
「ち、違うんだ!こっ、これはこの前の詫びで……//それに今度は俺の金で買ったんだ」
「……この前の詫びって何だい?」
とめは忘れているのか首を捻る。
「その……//おとめさんに迫られた時に触っちまったから……」
「?はぁ。それでこの贈り物の量かい?詫びにしてはちと多すぎやしないか?」
とめはそう言って自分に届いた贈り物の山を見る。
「……会津の金を使ったってんじゃないんならいいんだよ」
いくらか落ち着いたとめは仕方ないという感じで用意された座布団に腰をおろす。
「……でもやっぱりこんなには受け取れない」
それを聞いた近藤はあからさまにがっくりと肩を落とす。
「……でも、この内のどれかだけ近藤さんがどうしても私に受け取って欲しいってもんがあるならもらってもいいかな」
「えっ!?」
「私のことを思って選んでくれたんだろう?」
近藤の顔がぱっと明るくなり、そういうことならと慌てて贈り物の山に飛び込む。
「なら、これとこれとこれを受け取って欲しいです……//」
そう言って近藤が出して来たのはかんざしと櫛と小町紅だった。
どれも高価そうでどう見ても質が良さそうなものだ。特にかんざしなどは、べっ甲に蒔絵が描かれていて、誰がどう見ても上等のものだ。
「おおおおおとめさんはいつ見てもお美しいですが、髪にかんざしをつけるともっとお美しくなると思って//」
そう言ってかんざしを差し出す近藤の手は、少しだけ震えていて。
とめは困ったような表情を浮かべた。
(この近藤っていう男、でかい図体でそこそこ力もあるくせに何をそんな緊張することがあるかね?)
「……仕方ないねぇ。ほら、つけとくれよ。そのかんざしとやらを」
「ええっ!?」
近藤は驚いてかんざしを落としそうになった。
「?何を驚いてるんだい?くれるんじゃないのかい。そのかんざし」
「おおおお俺が……おとめさんの髪に触ってもいいのか?」
「??何言ってんのさ。早くつけとくれ。鏡がないから自分じゃつけられないんだよ」
「あ、ああそういう……」
襖越しに会話を聞いていた土方が思わず吹き出す。
「では……失礼します//」
剣の試合をする時よりも緊張する。近藤は震える手を押さえながらやっとの思いでとめにかんざしをつけることができた。
「どうだい?」
剣の腕も立つのに、恋愛となると途端にへっぽこになる局長が大好きです。
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