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早咲きの蓮華は地面に咲いた  作者: 雨夜玲
それを望んだわけではない
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変わらない時間

 人間はなににでもなれるが、逆になににでもなれてしまう。

 望んだものになれるときもあるし、望んでないものになるときだってある。

 僕の親についても、先輩の性別についても、今回の恋もそうであったように。

 ……生きることを望まない人がいるように。

 誰も自分に障壁があること、それを望んだわけではない。

 それは今こうしてるのも、べつに望んだわけではない。

「お水飲んだ? ならあーもう動かないの!」

 ぼーっと先輩と過ごした時間のことを思いだしていたら、不意にクラッと頭が揺れて、風呂の扉に頭をぶつけた。扉の外でギルに心配されて、腕をぶつけただけとごまかした。……それで済めばよかった。

 でもそのあと、洗面所に出てたときにはさらに悪化していて、体を拭いている途中、バランスを崩して思いっきり倒れ込んでしまった。

 ……これも先輩のせい、とは言えないか。

 僕を見て叫びそうになったギルに一言「のぼせた」と言えば、頬を膨らませて「またー?」と言われてしまった。

 ギルに見つかったら水を飲まされて、体を拭かれて、着替えさせられて、ソファーに運ばれた。なにもかも、されるがままだった。

 ぐったりと背もたれに体を預けてのぼせを冷ましているなか、ギルにタオルドライされていた。

「ほんとれーくんよくのぼせるんだから気をつけてよね。どこも怪我してない?」

「のぼせた相手の頭を揺さぶりながら言わないでくれ……吐く」

「だってタオルドライしないと髪傷んじゃうもん」

 もうとっくに傷んでいるからほうっておいてくれ。

 揺れを抑えてくれたら、

「俺いなかったらどうしてたの?」

「静かに治まるのを待つしかないだろ。こんな程度で助けを呼ぶ必要もない」

「ないことないよ。打つ場所悪かったら意識飛んじゃうんでしょ? 少しでも気分悪くなったらすぐにしゃがんで呼べそうなら呼んで?」

 こんな程度で呼ぶ必要ないと言ったんだがな。落ち着けば治まるんだ。

 ふらつきが治まった頃、タオルドライも気が済むまで終えたらしく、当たり前のように「ドライヤーするよ」と言われて洗面所に連れられた。椅子まで持ってきて座らされる。座ったらクシでとかしながら、ドライヤーの温風を当てられる。楽だ……。

「れーくんは……やっぱり俺の家に住むの嫌?」

「……迷惑はかけられない」

「迷惑じゃないのに。……でもそっかー。いつか一緒に住めたらいいなー。れーくんが俺の家に住むことになったら俺がお兄ちゃんね! れーくんのほうが……ううん。俺のほうが背高いから、あはは」

 ふっ、なにが背が高いだ。ギルが言いたかったことはわかるが、僕を思ってか言わないでくれたみたいだ。

「それでれーくんと俺は同じ部屋で勉強机も隣でー」

「同じ部屋は勘弁だ」

「えー、なんで! ベッドもおっきいの一つで一緒に寝るつもりだったのにー。今日だって俺れーくんと同じベッドで寝るもん!」

 ギルだから、こう考えるんだろうな。他の人なら友人関係でダブルベッドで一緒に寝ようなんて考えない。

 ギルは昔から僕のことを好きだと言って、それは今も全く変わらない。むしろ強くなったまでもあって、週に一回は必ず好きだと言ってくれる。

 もちろん、その「好き」は恋愛云々ではなく、言葉の前に「友だちとして」みたいだが。

 一時期本当に離れてほしいなんてことはあったが、今はこれっぽっちも思っていない。むしろ、あの笑顔に支えてもらっている。ひまわりのような眩しくて輝いた笑顔に。

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