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早咲きの蓮華は地面に咲いた  作者: 雨夜玲
それを望んだわけではない
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血も出ないような痛み

「先輩は……心が男、なんですか」

 撫でられなくなったあと、先輩の向かいに座り直して聞いた。

「……らしいなぁ。女子トイレにも女子風呂にも入りたくねぇ」

 けど先輩の体は女で、世間が男子トイレや男子風呂に入ることを否定する、か。きっと、先輩はそんなこと、望んだわけではないだろうに。

 親には言ったのだろう言うか。言って否定されるのはきっと、いや絶対に……怖い。胸の内側から何度も刺されて、でも血も出ないような痛み。

 けど、先輩のその悩みをどうにかするには、未成年の先輩にはどうにかできない。

 だから「一度親に気持ちを言ってみませんか」と、そう言おうとしても、なぜか声には出なかった。……言えなかった。

「あぁー酔ってきたぁ。君、水ちょぉだぁい。これそんな度数高くないはずなんだけどなぁ」

 言われたとおり水を出した。やっぱり、帰らないんだな。

 水を数口飲んだあと言う。

「はぁー。ちょっと寝るわぁ。君も寝たいなら俺に構わず寝りゃあいいからなぁ。おやすみぃ」

 そして机に顔を伏せた。

 ……いや「おやすみぃ」じゃないです。ここ僕の家です。勝手に寝ないでください。

 脳内でそんなことを言っても伝わるわけがなく、ソファーに寝転びにいった。先輩が寝るなら、僕も寝る。体を楽にさせたい。


 気づいたら寝てしまっていたようだ。薄手のブランケットが掛けられている。確か食卓椅子に掛けていたもの。先輩がしてくれたのだろう。

 異様に寒気がし、体を起き上がらせたあとブランケットを肩に掛け直した。食卓椅子には先輩の姿がなかった。帰った……か?

 カーテンからはオレンジの光が漏れている。かなりの時間寝たらしい。感染症を患った時は異様に眠気がして寝てしまって嫌だ。

 先輩が帰ったとなれば玄関の扉は開いたままなはず。行けば開いていたから、きちんと閉めた。

 起きてからずっとヘンな眠気が残っていてもう一度眠りに入りたい。電気を消して、ソファーに寝転んだ。

 インフルエンザが悪化しているんだろう。体が重くて仕方がない。ただ、早く眠りについてこの体から解放されたいと、願うように眠気が襲ってくる。

 寝よう。寝ていれば治る。いつもそうだった。

 ギルが来るかもしれないが、対応できないかもしれない。そうなったら悪い。

 寝かせてくれ。

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