第7話「ブルーコート」
「空母なんだよね?」「氷山だろ」「ブルーコートの歩行戦車だ」新しい転居者が艀と一緒にやってくるのを見下ろした。空軍でも海軍でもない、陸軍だ。ブルーコートと言えば精鋭中の精鋭、ほとんど歩兵なのだが、機甲部隊と同じくらい手間暇をかけさせられる部隊は、精鋭の装備だ。
氷山空母ハボクックには陸海空の三軍が揃うらしかった。「スパゲティ食べたくなってきたよ」ポップペップバーンは、シャインナイツが何を考えているのか時々ではなく頻繁に思うことがあった。
夜襲ーー魚雷艇が近づいている姿が、サーチライトと照明弾で浮かびあがる。黒い海面を滑るPTボートは魚雷を何本をぶら下げて、海に住む発光生物を御構い無しに光らせながら全速で突っ込んでくる。ハボクックの砲座が火を噴いた。要塞のような輝きの中の一つには、ポップペップバーンとシャインナイツが担当する40mm八連装の機関砲もある。「水面まで距離がありすぎて、この豆鉄砲じゃ揺れる麦を撃ってるようなもんだ」「当たりゃしない」曲射でなんとか2km届いている、筈の弾道は狙ってやっているものでもなかった。曳光弾が流れる星のような放物線を描いては、海面へと帰ってくる。機関砲以外にも多数の両用砲がハボクックにはある、あるが通常の対艦用の砲と違って大俯角での射撃も考えられてた設計だ。水平以下の仰角で、発射率はいちじるしく低下していて、射程も曲射の40mmと同じくらいにまで縮まっていた。
「あっ」シャインナイツの漏らしたのは、PTボートが直撃を喰らい、残していた魚雷が誘爆して果てるさまを見てだ。終わった筈で気を抜くべき瞬間を、甲板から飛び込む連中で水をかけられる。ブルーコートの歩行戦車が、高い、とても高いハボクックの飛行甲板から海面に飛んだのだ。落ちたのではない、ブルーコートは着水と水飛沫でいったんは沈み込み、そして浮かびあがった。浮航能力があるのだ。水陸両用車のようなものだ。ブルーコートは、ハボクックの水線より下を念入りに調べ、水中スクーターのようなものと乗り手で工作員を怪力機力の腕で釣りあげていた。工作員たちは、観念したように水中銃をコックし、チャンバーが空であることをアピールした。ダーツで、軽戦車並みの装甲を貫通はできない。
釣り上げられた工作員は、吸着爆弾を仕掛けようとでもしていたのだろう。シャインナイツは連行される工作員たちを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべ、「今日は大漁旗が必要だね!!」渾身のジョークだ。




