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第6話「茶を嗜む修練」

マグカップの取っ手を「……ふー!ふー!」指先だけで摘んで持つ修練をしていた。ルーナ・シャインナイツは大真面目だ。提督に紅茶愛好家と思われて、飲み方のマナーを練習しているのだそうだ。サボれば良いと思うポップペップバーンだが、シャインナイツ曰く「次のお茶会に発表会があるんだよ〜助けてよ〜」と言われて無視した。泣きついてくるシャインナイツとは対照的に、ポップペップバーンは普通に、取っ手に指をくぐらせて飲んでいる。ポップペップバーンに上流階級の嗜みは他人事だ。ただ、彼女はやらないのであって、できないわけではない。


シャインナイツがマグカップと格闘しているその時、ハボクック左舷に巨大な水柱が立ち昇った。水竜が天に昇るようなそれは、魚雷攻撃を受けたということ。船体の氷塊への直撃弾は、いかに巨大な氷山空母と言えども大きく揺さぶった。「あぁ!?割れちまったぞ!」少なくともシャイナイツのものではないマグカップが悲劇の中、二人は甲板まであがった。真横の装甲越しの北海の冷たい氷は修復は簡単なのだろうが、雷撃を受けていても喜んで待っていられる程には信用がなかった。沈むのは、恐ろしい。どれほど科学が進んでもいまだに変わらない恐怖の一つだ。


紅茶と苦戦しているからと敵がこない、ということはない。ハボクックの艦内に警報が響き、それは氷壁を震わせ、シャインナイツの手からマグカップを落としこれを割った。「あぁ!?」だがそんなことがどうしたかと、愚痴をこぼしながら配置へと急ぐ。対空砲だ。グリーンメイにはすでに、射撃管制室からデータが送られ、弾倉の中の対空榴弾の調整を終えている。半自動化は、一秒が遅すぎる対空戦では必須。逆に言えば人間の役割が随分と小さい。


ポップペップバーンは双眼鏡を目に押し付け、シートから半身を出しながら空を見据えている。「おー?羽虫みたいなのが動いてる、動いてる。六発のプッシャー、しかもジェット混合でぶら下げた巨鳥」「そんなヘンテコはピースメーカーだ」双眼鏡を外せば、陽は深く差し始め、赤く変わりつつある。B-36ピースメーカーは一足早い夜の空から侵入している。「光学じゃなんとも駄目ね。影になってる」半夜に黒い傘が咲く。対空砲火、その炸裂だ。


「耳栓忘れた!」叫び声は大口径砲の声に掻き消され、グリーンメイの弾倉は一〇秒とかからずに全て薬莢として吐き出された。空の弾倉は弾かれるように捨てられ、砲身を天に、弾倉を立て、ハボクック艦内からせり上がってきた新しい弾倉を込めては、また乱れ撃つ。

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