第5話「紅茶と蜂蜜」
紅茶は心と胸が温まる。だが、ポップペップバーンは別に、紅茶が特別に好きなわけではなかった。単にかじかんだ指先が温まるから飲んでいるだけ、というけっこう愛飲家に喧嘩を売っているような理由を腹の中に持っているポップペップバーンは今日も喉に紅茶を流した。反対側のシートに座るシャインナイツは、紅茶のポットで暖をとっていた。「紅茶飲まねーのか?」「レモンが氷になったからやめた」「……そっか。私の半分飲む?」「……飲む」ポップペップバーンとシャインナイツは賭けをしていた。それは、氷山空母ハボクックが完成した暁には、暖房器具が設置されるのかどうかだ。二人とも「設置される!」に希望した。
「知ってる?ハボクックの乗員は極地探検隊から引き抜かれてるそうだよ」「北極に探検に行けるなんて素敵だね」「ポップペップバーン、それは笑えねぇ」「シャインナイツから話を振ったんじゃない……」ポップペップバーンは露骨に嫌な顔を浮かべるシャインナイツに呆れながらも、特に気分を害してはないない。紅茶に蜂蜜を混ぜながら、冷蔵庫不要の食堂で、冷める前に朝食を食べきるレースをしていた。「シャインナイツ、ステーキが半解凍だぞ「ばっかだなぁ、早く食べないからだ。コンロで炙ってくれば」「しゃりしゃりして歯応えがあるからいい」ハボクックの数少ない楽しみは、他の軍艦よりも何倍も多くの肉や生鮮食品を食べられることだ。巨艦なぶん、食料庫も大きいし、半分天然の冷蔵庫の容積も桁違いなので大量に食べ物を詰め込んでいるのだ。
ポップペップバーンとシャインナイツは正面から見つめあい「次の戦争は」「絶対に」「「ゴルフ場!!」」二人は意見が一致していた。誰も好き好んで辛い場所でお給金の為に体を張るのは避けたい。兵隊だって同じだ。選べないのが難点だが。歌うようにハボクックにケチをつけては、他の乗員を巻き込んで、食堂を賑やかす。
凍てつく海、凍てつく艦、なれど心までは凍てつかず、熱く燃えよ兵たちよ。氷山にも負けず、竜巻にも負けず、ましてや雷に臆することもなく、荒ぶる海を制さんとする強者どもであることが彼ら彼女らの誇り。
「ポップペップバーン!シャインナイツ!183mmの砲弾揚げ手伝ってくれ」彼女たちの呻き声が響き、それを笑った兵士らが何人か、シャインナイツに首根っこを掴まれて『お手伝い』に駆り出された。183mm砲弾は大きくて重い。懸命なボランティアが必要不可欠な存在だ。幸い、シャインナイツにかかれば『無限調達可能な資源』だ。遺跡よりもずっと信頼できて、気楽で、気心が知れて、それはポップペップバーンも変わらない。




