第3話「遅れる建造」
過冷却された海水がハボクックの船体、もしくは切り出した氷山を接着しているところだった。「見て!見て!氷が立ちションーー痛い!?」「シャインナイツ、下品!」ひっぱたかれたシャインナイツは唸りながら氷の上を転がって……滑っていった。「あぶねー、危うく氷海にまで落ちるとこだった……」およそ艦勤めとは思えない鋲付きの軍靴が氷を掴みつつ、シャインナイツは走って戻ってきた。今日は雲が低い。視界は極端に短いが、コモンウェルス自慢のレーダーがある程度は雲の中を電磁波で走査してくれるぶん楽だ。レーダーと言えば、ポンポン砲にも射撃レーダーが付いていた。照準用のレーダーを当てて・自動的に追尾と射撃をしてくれる賢いコンピューターとセットだ。今は、シャインナイツのおもちゃとして突かれるだけのものだ。
「それ壊したら、一生海軍暮らしか、北海に蹴落とされるかもよ」「マジか!?早く言ってくれよポップペップバーン!!」まさかもう壊したのか、とポップペップバーンは訝しんだが、そこにはありのままの射撃レーダーが原型を留めていた。ポップペップバーンとシャインナイツの両手は弾薬いっぱいのカートを押している。訓練用の弾薬を持ち上げる雑用中だ。弾薬庫から、銃座までエレベーターで運んでカートを押すのはよくある仕事だった。揚弾機と弾薬庫がセットになっている砲塔と違って、銃座は人力で持ち出して集積しておく必要があるのだ。一発はせいぜい、掌くらいだが、それが何百発も必要となれば重量は計り知れないものとなる。
シャインナイツが悪態を吐いている。「巨大空母の癖に、容積余ってるんだから、もっと優しい設計や機械をつけてくれても、いいんじゃないかなってルーナちゃんは思うわけだよ」人力仕事は数多い、もっと楽になれ、と誰もが思うがならないものは数多い。「ん?」ポップペップバーンのカートが止まる。張り紙された水密ハッチのせいだ。『水没中、迂回しろ』とあり「そうだ!ここの区画はゲタリングバグのせいでで沈んでたんだった!!」未完成なのにあちこちボロボロで、産まれる前から修理を繰り返すのは氷山空母にはよくある話だ。完成はさらに遠のいたことだろう、ポップペップバーンとシャインナイツは同時に溜息を吐き「三ブロックは遠回りしようか」「遠いね……」ハボクックは大きい。大きいということは、それだけ歩く距離が長いということだ。鉱山のトロッコのような、艦内の電車のようなものを作る計画もあるが、少なくとも線路もないので噂でしかないというのが二人の考えである。




