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第8話「今と未来の話」

もしかしたら。ずっと未来には、この空は一つになっている、のかも知れないとヒイロ・オールガードの頭をよぎった。無線はもっと便利になって世界中どこでも簡単に通話ができるようになる筈だ。飛行機に乗れば世界中どこにでも行ける筈だ。世界はずっと小さくなる筈だーーだが、今じゃない。「帰ってきてすぐで悪いが、代わりの戦闘機を用意してあるよ。F-86だ。今はパイロットが欲しい。ジェットの勝手は同じようなものだ、飛んでくれ、ヒイロ」F-86セイバー、Mig-15と同等以上の高性能機だ。飛べと言われれば、戦った。だが新しい愛機であるF-86に乗り込み出撃直前の……出撃中止だ。


遺跡が暴走しーー戦闘に当てられて自動防衛システムとでみいうべきものが飛行物体を完全に叩いて制空したらしいーー遺跡の争奪が継続不能になったことでの引き上げだそうだ。空が輝き、炎と煙に包まれ全部落ちた、とは生き残りから聞いた話だ。ヒイロのいた空は、遺跡争奪戦の空ではなかったので全ては又聞き。遺跡を狙う兵器だけが破壊された。本題であるはずの、クーデターには手を出されずに。だがーー内戦は終わらせられたのだ。


「終わった?」ヒイロは飛行服のまま「戦火を広げておいて、終わらせた?」クーデターから内戦へ、そしてそれは戦争だった。メカリスとノヴォハザールが、遺跡であった天の梯子の獲得を目指した“戦争”は疑いようがなかった。遺跡の存在は戦争よりも遥かに価値が高いのだ。だが……だが、ヒイロは納得がつかなかった。『戦争はいつでも止められた』という事実にだ。撃った、撃たれたは仕方がない、それが戦いだ。「両国の政治家の気紛れが戦争を起こして、ゲームを一方的に終了宣告するのか」天の梯子は、多国籍での共同研究という形に落ち着くそうだ。戦争も、クーデターも終わった。列強にとっては、だ。


「マキナ、見て。戦争はね、この国では『始まった』んだよ。ナショナリズムを扇動して、武器も配った。戦い方を学ばせた。戦えるとわかった。燃料を入れて、火を点けて、燃えているのに終わりにどうやってできるのさ」街は燃えてしまった。住む家もだ。遺跡だけが無傷で残された。残ったのは遺跡だけではない。国を繋いでいた意思が根底から揺るがされた。国家が分裂しかねないだけの衝撃を与えたのは、他ならぬメカリスとノヴォハザールだ。「でも終わったんならーーそれは良いことなんだよね」「うん。とても良いこと、だよ」「なら……よかった」ヒイロはサーバーからオレンジジュースを絞った。少し口当たりが柔らかくなっているのは、オレンジを変えたからだろうか、とヒイロは味の違いが気になった。「気づいた?美味しいでしょ。城塞都市で買ったオレンジだそうだよ」マキナに言われると、このオレンジジュースには地上の香りがたっている、そんな気がした。


今後の予定は聞いている。メイコンⅱはまた別の空に向かうのだ。ヒイロはその前に、世話になった家に行きたいな、と思っていた。酒保で抱えきれないほどたくさんのお菓子やら嗜好品を手に入れる裏合わせは済ませていた。「マキナ、ちょっと下に降りる予定はない?」とヒイロは「ヘリコに相乗りしたいんだ」マキナは少し考えていた。そして「うん、ちょっと散歩したいなと思ってたんだ。タクシーの申請書を出してくるよ。もちろん、二人分で荷物の重量もね」ヒイロはマキナに抱きついていた。「マキナ大好き!」

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