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第1話「異父姉妹を射て」

空中空母の数はまだ少なく、その任務はパフォーマンスにある。ヒイロが見下ろす土地が、彼女の聞いたこともない小国であることには事情があった。ヒイロに難しいことはわからないが、名前も知らなかった小国がメカリスの強大な軍事力に安心を感じているのだ。メイコンⅱは、メカリスという国家そのものと言っても過言ではなかったーーだがそれは何も、メカリスに限った話ではなかった。


パイロットたちを集めたブリーフィングで、ヒイロたちの飛ぶ空域は実質的な敵国なのだと警告された。メカリスの国家体制と正反対のノヴォハザールの空中空母も全く同じ理由で同じ空を飛んでいる。ヒイロは面倒な空だな、領空侵犯なら正々堂々と追い返せるのに。だができない、拳銃を突きつけあって握手しながら一緒に飛べと。


ブリーフィングで紹介された、引き伸ばされた最重要ターゲットの写真は、大型爆撃機を改造した空中空母貼られている。両翼の先端に直接、子機をドッキングだ。メイコンⅱよりは小さい。対処は爆撃機のものと同じだろう。ただ、爆撃機と同じということで、重爆の編隊はどこにでもいて、その二倍の戦闘機は数が多い。「空中空母て流行りなの?」「うーん、昔の多砲塔戦車くらいはねぇ」「マキナ、それって……」「各国考えることが結構似てて、ジェットを少なくともプロペラ機と同じくらいには飛ばしたいのさ。片道1000km以上はね、『最低は』だけど。でも今のジェットはとてもそんな遠くまで飛べるわけがない、燃料を大量に消費するから……んで、低燃費の空中空母で戦闘空域至近まで送ろうて考えが産まれたんだ。なんてことはない、旧大戦の複葉機の問題の答えに先祖返りしただけなんだけどねぇ」ともあれ空中空母、空中発進というのは浪漫を感じる、というのがヒイロにとっては大切なことだ。


長時間空を制空する空中空母は、着陸しない。空中で補給も食事も済ませて、パイロットを分担させるだけでなく、替えのパイロットを地上から輸送して引き継ぐ。なんでも空中で完結だ。地上の滑走路を使うことが、基本的にはなくなるのが空中空母勤務の空人。地上には関与しない、空中だけで生活が完結してしまうと、本当は地上で生きている生き物だと言うことを忘れてしまいそうになる。


「遺跡のテクノロジーて凄いね」「怖いところもあるよ」「どう言うこと、マキナ」「考えてもみたまえ」とマキナはまるで大学の教授みたく言葉に権威を載せて「メイコンⅱはどうやって浮かんでると思う?」「そりゃ、飛行船と言えば水素か“メカリスの専売特許”かな」「ブブー!外れだ、ヒイロ。そしてたぶん、ヒイロが絶対にわからない物質だよ。遺跡から作ったまったく新発見の物質だからね」ヒイロ梯子メイコンⅱの気嚢を壁越しに見つめた。得体の知れないものがそこかしこに詰まっていた。


「大丈夫なの?」とヒイロが訊くが、マキナはイエスともノーとも答えずに「わからない」とだけ答えた。「他の国が開発した空中空母は、遺跡の技術をもっと限定して、大型航空機に少数搭載、て従来技術の補完程度にしか遺跡の技術を使ってない。メイコンⅱは比率的には異常なまでに遺跡に依存しているんだよ。彼女は、とても強力だ。遺跡の技術を盛りだくさんだから。でも……」マキナは言い淀んだ。そこには先程までの自慢の空気は隠れてしまっている。ヒイロはそれに何かを感じる。「ともかく、メイコンⅱは良いエアシップだろうね」遺跡なんて知ったことか、今私を空で暮らさせてくれているのはメイコンⅱで、それが全てなのだ。

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