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第7話「祈りは神様以外に」

こんな地獄は久しぶりだ。空ではMe262シュヴァルべとP-72が空中戦を演じて白い軌跡を刻む一方で、黒い森と海峡を挟んだ遠距離砲撃戦が森を土石流の竜と空へと立ち昇らせた。普通の砲兵と大砲ならさっさと逃げるところだ。……そうならない為にラーテⅤがいることも、エミーリアは知っていた。「ラーテは野砲とは違う、戦艦じゃ!自走砲みたく一々止めるな、行進射でもって撃ち続けよ」ドーラの激しい指示が戦場でも兵士を導いた。ラーテより巨大な土煙が舞った。エミーリアはそれを前に、「本当にデモイン級の203mm砲なの?」と不安を膨らませた。毎分九〇発の全力鉄量は陸軍の砲兵とは明らかに違う、重巡洋艦という戦艦に次ぐ火力の女王を見せつけられた。一秒で一発以上の203mm砲弾が降ってくる計算だ。砲兵連隊の比ではない重砲の乱打には、エミーリアの肝を冷えさせた。だがーーそれだけだ。「撃てい!」何度めかの斉射がラーテⅤの28cm砲弾を地平線の彼方へ送った。大口径砲弾は大気と雲を切り裂き、空へと吸い込まれた。命中まで何十秒もあるが、換装室ではそんなことは御構い無しに、既に次弾の装填作業に入っているだろう。


「P-72どもは気にするな。連中は本格的な砲撃戦になれば撤退する、いかに確率が低いとは言えこんな砲撃の中を飛ぶのはウィッチでも不可能じゃ」「デモイン級、さらに斉射。前進している聴音班から飛翔音の報告が来てる。正確に狙ってきているわ」「あっちもこっちも観測機か観測班がいるということじゃろ」「弾着ーー来るわ」「ちっ、弾継ぎが速い」デモイン級の毎分九〇発という鉄量の投射能力は数字として知っていたが、浴びる側としてはその数字以上の圧迫感があった。こちらが撃てば、一〇発以上の倍返しの報復があるのだ。幸い、分散している他のラーテとの交互砲撃で正確な位置への修正を誤魔化している、が、その短時間で一〇〇発以上の203mm砲弾が降ってきた。「そろそろ弾切れを起こしても良いと思うのじゃがな」「ドーラ、軍艦てのはとても大きいものよ」上空からヤーボのエンジンから響く爆音が消えたと思えば、大気の切り裂き音が吹かれていた。死神の口笛だ。「来たぞ、踏ん張れい!」ラーテⅤの巨体が揺さぶられた。「今のはヤバかった」冗長な砲撃戦だった。だらだらと撃ち合い、無駄に弾薬を消費していた。だがそれでも撃たなければ、一方的に撃たれて。観測機からの報告にのっとり、テーブルの上に書き込まれたデモイン級の航路をもう一度修正した。デモイン級は回避機動をとっていた。ジグザグに舵を切っては、未来位置を特定させなかった。元より快速の巡洋艦だ。ジグザグに油を消費して、やっと身重の輸送船団の補足が難しくなっていた。


「ーー敵機直上!」監視員の報告と急降下は同時にやってきた。薄い雲に隠れていて発見が遅れた。「急降下爆撃なんて止まってるのも同じ、撃ち落として」エミーリアの位置からは敵機は見えなかった。だが爆弾の直撃した振動はなく、外したのだと理解した。陸上戦艦での戦いは、戦車とはあまりにも勝手が違いすぎる。戦車なら全員が同じものを見て、同じように考え決断して動く。だが陸上戦艦は、頼れる仲間は遠かった。

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