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第6話「生きる為に冥土へ」

幸運だ。無線機の修理に成功した。輸送船団が戦艦に食い荒らされる前に、28cm連装砲を牽制に使える手筈が整えられた。無線機がなければ間接砲撃は不可能であるし、ラーテⅤは今次作戦に参加できないところだった。各員の汗と技の賜物だ。「諸君、我々の標的がわかったぞ。デモイン級重巡洋艦じゃ。戦艦と比べるとちぃとばかし小ぶりじゃが、古い世代の戦艦と同じ規模の巨艦、不足はないじゃろ」エミーリアは、メカリス海軍の情報からデモイン級を調べ上げた。203mm三連装砲を三基九門、高度に自動化された砲で毎分九〇発の鉄量を投射する。大型巡洋艦だが、排水量は一七,〇〇〇トンで弩級戦艦並みだ。メカリス海軍巡洋艦の集大成とも言える、打撃主体の巡洋艦だ。


「海の狼たちが蹴散らされた艦隊だ。わしらが阻止せねばならんじゃろ」「Uボートが頑張ってくれたなら、私たちみたいな防衛兵器が出なくて済んだかもね」「だったのなら楽な戦争じゃろうが、不思議なことに楽な戦争というのは矛盾しておる」「狼の牙では立たなかったけど、さて、ネズミのか弱い牙でどこまで戦えるのかしら」誰もが本格的な戦いが近いのだと察していた。だがそのせいで影を作るものはおらず、寧ろ士気は高く保たれていた。何度かの空襲とコマンドの襲撃からラーテⅤを守り抜いたことが、彼らに自信をつけていた。


「酷い戦いになるぞ。わしの勘じゃがな「それは、当たって欲しくない類いの勘ね」「願おう」ところで、とドーラは話を続けた。「敵艦隊の海峡入りは?」「夜明け前に輸送艦隊と接触する予定よ。輸送艦は巡洋艦よりも足が遅いから、まともに追い掛けっこをすれば逃げられない」「我らが海軍はどこに行かれたのやら、じゃの」「…………さぁね」観測機とラーテⅤとの無線の繋がりは良好だ。他にも、黒い森各地にはGWタイガーの17cm級自走砲が陣地を構築しているし、聴音機とレーダーによる監視網も構築されていた。電話線の一本や二本の寸断で止められる砲撃陣地ではなかった。迎撃機用の仮設飛行場からはプロペラ機がすぐに駆けつけてくれるし、少し後方からのジェット戦闘機も展開される手筈になっていた。海峡には言わずもがな、蹴散らされたとは言えUボートの監視線がいまだに生きていた。ーー戦いは近い。


「……」エミーリアに不安がないかと言えばそんなことはなかった。交戦予定時刻を計算すると、どうにも朝食は抜きになってしまいそうだ。エミーリアにとって残念な事実だった。「ドーラ車長、皆んなに特別配給を出すことを具申するわ」「良い心遣いだ、エミーリア。手配はよろしく頼む。デザートは二倍出せ、甘いものも」と言うドーラの顔は大真面目だった。デザートやお菓子、そんな子供っぽいと言われるような食べ物が何よりも貴重な嗜好品であることがままあるものだ。エミーリアも、固い乾パンを食べて戦うか、至高のプリンを食べて戦うかでは、士気に関わってくる大きな違いがでる。

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