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第4話「影が動いた」

歩哨は単純で眠気との戦いと同じだ。だが油断にこそ漬け込んでくるのが賢い敵だ。ーー闇夜に混じりコマンド部隊がラーテⅤのハッチを爆破した。車内で激しい銃撃戦が繰り広げられ、Stg44、MG42が惜しげもなく死神の群れを吐き出した。「状況は?」と指揮所に入ったドーラは寝巻きに上着を羽織った姿で「コマンドが侵入したのは知ってる。何人か締め上げたからの」彼女の持つ腰の拳銃からはまだ硝煙が薫っていた。エミーリアは車内被害を書き込んだアクリルボードを見ながら「規模は一個小隊ほど。機関室と揚弾機周辺を防衛線に設定して現在も交戦中よ」車内通話機からの混乱を無視して、必要な情報だけを聞き分けた。防衛線は上手く構築されているようだが、コマンドの逃げ道は塞いでいない。エミーリアとしては、規模が不明の侵入者にはさっさと撤退して欲しいからだ。「穴は?」「昇降口を爆破されたみたい。後続は現在のところ未確認、戦闘に参加しているのはラーテに侵入している一個小隊規模だけ。外部からはまったく支援はない」「ふむん、なるほど」とドーラは戦況を見て「機関室に増援を集中して撃破するのじゃ。揚弾機の防衛は換装室と隔壁の閉鎖で時間を稼げ。主砲周りの装甲は厚い、それに予備砲弾が誘爆すれば全員が吹っ飛ぶ、簡単に爆破は不可能じゃ」「既に手配しているわ」


微かにラーテⅤが揺れた。PIATかバズーカか、侵入してきたコマンドは重火力を装備しているのは間違いなかった。車内でパンツァーファウストなどの対装甲兵器を撃ち合っているとなると、エミーリアはラーテⅤの損害が不安だった。だが今は考えている場合ではないのも事実だ。コマンドを追い返せなければ、ラーテⅤは致命的な損害を被ることになるには明確だ。ーーカッ。「!」“それ”は指揮所の床板を跳ねた。何か、手榴弾だ。ドーラは一寸の迷いもなくそれを扉の隙間に指を食い込ませて閉めさせず投げ返した。投げた直後に扉を固く閉ざした。通路から叫び声、ドタバタと走る足音の後に炸裂音が轟いた。「二、三人はやれたかとも思ったが」ドーラは慌てて駆け寄った兵士からMG42を受け取った。ドラムマガジンが二つ、ベルトリンクが剥き出しではないとはいえ、個人が振り回すには重すぎるソレを軽々と扱った。「良い判断をするコマンドらしい」「最高戦力のお尻が軽すぎる気がするのだけれど」「気にせんことじゃ。ラーテの車長と言えども、車長は車長、歩兵で言えば班長程度の地位じゃろ。付いてこい、エミーリア。侵入してきた連中に弾丸と冷たい夜の風で眠る手筈をしてやらねばな」「ここの指揮は?」「簡単じゃーー」ドーラはニヤリと笑い、鋭い牙のような歯を覗かせた。獰猛さは猟犬というよりもドラゴンだ。「ーー戦いながらとれ!」


コマンドはすぐさま撃破された。隔壁の閉鎖による分断と、ドーラ自らが率いた部隊が優勢をとって分割した敵部隊を一つずつ潰した。夜明けが来る頃にはコマンドは全滅し、ドーラは眠りについた。大きな問題は残った。コマンドによる損害はほとんど阻止したが、間接砲撃の要である大型無線機が完全に破壊されてしまった。修理には、時間がかかりそうだった。

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