閑話:学園では……2
なかなか更新できず申し訳ありません。
ブクマ、評価ありがとうございます。
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私は今、トランクと侍女と共に真夏の夜に放り出された。放り出さたとは言っても、明日の朝でいいと言われたのだが。
ただ、今放り出されたからといって私は困らない。
ヘスフィラル様のスペード寮に行くまでだ。
「アリス様、これからどうなさるのですか?」
「決まってるじゃない、行くわよ。スペード寮に。」
「かしこまりました。」
ハート、クローバー、ダイヤ、そしてスペードの寮は同じ1つの一角にあり、4つの寮は十字路で区切られている。中央広場には噴水を中心にした庭園がある。この庭園には四阿やピクニックをできる場所などがあり、とても広い。したがって、同じ一角にあるとは言っても徒歩では時間がかかってしまう。また、寮の配置は北東にハート、北西にクローバー、南東にダイヤ、南西にスペードという立地になっている。つまり、ハートからスペードに行くには反対から真反対に移動しなければならず、とても時間がかかる。
そんなこんなでようやくついたスペード寮は、おそらく大理石であろう白の岩をベースとして、寮の色である青をところどころに色付けた歴史を感じさせる重々しい、荘厳な外観であった。
「このような遅くに何用だ。ここはスペード寮。そなたは……貴族のハート寮所属か。」
この学園の制服には、一目で貴族か平民か、また、どこの寮に所属しているかがわかるようになっている。女子生徒の場合、制服である紺のワンピースの袖口の周りを一周している白い線があれば貴族、なければ平民である。また、リボンの色が赤ならハート、青ならスペード、緑ならクローバー、黄色ならダイヤ、そして、ジョーカーなら黒と言った具合である。
この声をかけてきた騎士が私が貴族だとわかっているのに偉そうな態度をとるからには彼は自分より上の立場の人間はほとんどいないと思っているからなのであろう。
「先程、ハート寮の警備の騎士から寮生が1人追放になったと連絡がありました。その生徒でしょう。確か名前は……アリス・ロッセン男爵令嬢。」
その瞬間、最初に声を掛けてきた騎士は目を見開き、こちらをバカにしたように見てきた。
「そうか、あのアリス・ロッセンか。
…それで?何の用だ?」
ようやく本題に入れそうだ。
じめじめして暑いし、疲れて眠いし早く中に入れて欲しい。
「わたくし、ハート寮に居場所がなくなりましたので、かねてよりヘスフィラル様にお誘いいただいていたようにスペード寮に参りましたの。ヘスフィラル様にお取次をお願い致しますわ。わたくしたち婚約者ですから、何の問題もないでしょう?」
すると騎士は衝撃的なことを聞いたように目を見開く。何をそんなに驚くことがあるのだろうか。
「フロイト様、落ち着いてください。
気持ちはわからないでもないですが。」
なぜか、この騎士はとても怒っている。
どういうことだろうか?
「今日はたまたま、たまたま、ここの警備の人手が足りないから、手伝いにきただけなのに、どうしてこんな、奴に会わなければならない?しかも、殺してはいけないのだし?」
「フロイト様!取り敢えず、精霊を出そうとするのをおやめください。」
そのときだった。
「アリス・ロッセン男爵令嬢ですか?」
私も何度か会ったことがある、ヘスフィラル様の侍従が出てきた。
「はい、お久しぶりです。
アリスですわ。わたくし、ハート寮を追放されてしまいまして……
ヘスフィラル様の婚約者となったのですから、こちらに参ったのです。ですが、こちらの騎士様が中々中に入れてくれなくて……
わたくし、ヘスフィラル様の妻になるのですよ?
侯爵夫人です。未来の侯爵夫人にこの仕打ちはないとおもいません?」
あぁ、早く中に入れて欲しい。
「あ、アリス嬢、……こちらの騎士の方は……ふ、ふぉ「良い。言うな。」」
「早く中に連れて行け。目障りだ。」
騎士が言った。
「は、はい!」
そうだ、最初からそうすればよかったのだ。
わたしにはどんな部屋が用意されるのだろうか?
やはり、クイーンの部屋だろうか。
そんなことを考えていたわたしには、騎士たちが話していたことが聞こえなかった。
「あれが……!
わたしのかわいいメティーナから婚約者を奪った女か!
ふん、メティーナが手を出すなと言ったから父上も私もケレスも他の皆も何もしていないのだ。メティーナが領地から帰ってきてみろ。
立ち直れないほど恐怖に陥れてやる。」
「フロイト様、落ち着いてください。
……メティーナ嬢だって、あなたと変わらないほどいや、あなた以上のサディストですからね。1度自分が身を引き幸福の中に入れておいて、後からどん底に落とすわけですから。楽しみですね。」
フロイトは呆れた目で見ている。
「フロリアン、お前も大概だな。」
フロリアンと呼ばれた青年は心外だという顔をして、飄々とした様子で答えた。
「フロイト様たちフォーサイス公爵家の皆さんには及びませんがね。
エミリーも同じだと思いますよ。
最近ようやく家で暴れるのをやめてくれて。」
「ふっ、あの2人が本気を出したら怖そうだな。」
フォーサイス公爵家令息フロイトとアルヴィナ侯爵家令息フロリアン。
アルヴィナ侯爵家は侯爵家の中でも数少ない公爵派に組する家。
この2人は将来エーテルコーダ帝国の最強騎士団と呼ばれた時代の騎士団長と副団長となるのだ。
そして、アルヴィナ侯爵家令嬢エミリー。
彼女は後々メティーナに関係してくる。
もともと幼い頃に引き合わされ、メティーナの臣下となるべく教育され、それを望んできた彼女は、臣下というより、メティーナにとっては親友であった。副騎士団長一家である彼女の家では例外なく彼女も鍛えられ、メティーナ程ではないが非常に腕の立つ女である。そんな彼女はメティーナが蔑ろにされたことが許せなかったのだった。
エミリーがメティーナたちの襲撃事件について知り、フォーサイス公爵領に突撃して再開するまで、もう少し。
お読みいただきありがとうございました。
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