カルテID#009 ひな月雨音様
【Q 〜憧れと雰囲気だけの名探偵は、華麗な推理にまるっと乗っかる〜】の主人公、兵衛九(愛称、ここちゃん)とのコラボ作品です。
「なろう大学附属病院、やっと着いた。何回来てもでかいなぁ」
病院を見上げ、独り言をつぶやく。
「え〜っと、どこに行くんだったっけ?」
かかりつけ医で紹介状を渡されて、紹介先のなろう大学附属病院に診察を受けにきた。
「新患受付ってどこだ?」
キョロキョロ辺りを見渡していると
「新患受付はあちらですよ」
白衣を着た人に声をかけられた。
「わぁ、ありがとう。迷子になるところでした」
「いえいえ、お大事に」
「はい、大事にします」
くすくす笑う看護師を見送り教えてもらった新患受付に向かって歩き出す。意外と近くだった新患受付の前に立つ。
「おはようございます」
受付の事務員に声をかけられ、一瞬びっくりするけど、対応力抜群なので即反応できる俺。
「おはようございます。兵衛九です」
そう言って丁寧に頭を下げる。
「保険証、診察券、紹介状などお持ちですか?」
「診察券も紹介状もあります。保険証……たぶんあります」
「提出してもらえますか?」
「鞄から出しますね」
そう言って鞄をゴソゴソし始める。事務員がその姿を微笑みながらじっと見守っている。
「あっ、これこれ」
鞄の隅っこで申し訳なさそうに入っている紹介状を見つけ取り出し受付に提出する。診察券保険証も無事に提出を済ませて満足する。
「笹井クリニックからのご紹介ですね」
事務員が確認してきたから、思っていたことを伝える事にする。
「俺は大丈夫じゃないかなぁと思ってるんですけど、笹井先生が、取り敢えず検査だけでも受けてくるようにって熱心に語っちゃってたんで素直に来ました」
「えっ? あぁ、そうだったんですね。詳しいお話は担当医にお話しくださいね。それではこちらの用紙のご記入をお願いします」
3枚の紙を渡されて座って記入する事にした。基本事項を書き込み順調に書き進める。
「なになに、治療困難な病気(癌や悪腫瘍など)が見つかったとき、あなたはどうして欲しいですか? ん〜、あれ?これ選択肢がある」
①包み隠さず告知して欲しい
②家族にだけ告知して欲しい
③わからない
「いきなり癌って言われたらびっくりするよなぁ、色々考えちゃうだろうから、小出しで教えてもらうのが良いのか?」
ひとりボソボソと呟きながらアンケートに真剣に考えて答える九を隣で同じく渡された書類を書いていた人に話しかけられる。
「そんなに深く考えずに、この中だったらコレだなぁっていうものを選んだら良いみたいですよ」
「おぉ! ありがとうございます。お隣に神様がいらっしゃった。早速やってみます」
そう言って、質問事項に目を向ける。
「知りたいけど怖いなぁ。家族が知って俺が知らないのも仲間外れみたいで嫌だなぁ。うん、わからないにしておこう」
俺、やればできる子やん。凄いわ俺。自画自賛しながら、アドバイスしてくれた人にお礼を言ってなかったと思い、声をかけるタイミングを伺っている。
「あのぉ、アドバイスありがとうございました。スラスラかけました。神様のご親戚ですか?」
「いやいや普通の社会人です」
「いやいや、これだけの親切は神様でしかありません。本当に助かりました。神様のお名前を差し障り無ければ教えていただけたりしますか?」
「ひな月と言います」
「ひな月様、助かりました。残りの質問も頑張ります」
「えっ、あー、はい頑張って」
「よし、神様に助けてもらったから今日は良いことあるぞ!九、頑張ります」
気合いを入れ直して、再び質問事項に真面目に取り組む九。3枚全て書き終わる頃には、すっかり周りには誰もいなくなっていた。
それでは、ひな月様専用の診察券をお作りしました。
【カルテID#009 ひな月雨音】診察券お渡ししておきますね。いつでも、なろう大学附属病院に来院してください。




