111話 戦術家
――第一拠点・裏山。
森の奥。
距離が、一気に縮まる。
ノアが“中”に入ったことで、
戦場は外周ではなく――
内部戦闘へと変わった。
◆◆◆
チームB。
ダリオが笑う。
「来たな」
ルアンは動かない。
カサンドラが端末を見る。
「位置、特定できない」
「速すぎる」
その言葉の直後。
空気が歪む。
◆◆◆
――現れる。
ノア。
音もない。
気配もない。
ただ、“そこにいる”。
距離、数メートル。
ダリオが言う。
「近いな」
焦りはない。
だが――
その目は、測っている。
◆◆◆
次の瞬間。
ダリオが動く。
横。
同時に、足で枝を弾く。
音。
反響。
拡散。
複数の位置。
“本物”が消える。
ネオン。
「ダリオの攪乱!」
ソフィア。
「いい反応」
◆◆◆
だが――
ノアは止まらない。
視線が、ほんの一瞬だけ動く。
「……違う」
一歩。
踏み込む。
迷いなく。
“正解”へ。
◆◆◆
ダリオの笑みが消える。
「マジかよ」
ノアの拳。
――ドンッ。
ダリオの体が弾ける。
木へ叩きつけられる。
センサー。
ピッ
ネオン。
「ダリオ脱落!」
ソフィア。
「速いわね」
◆◆◆
――その直後。
別方向から。
ネロが現れる。
静かに。
一切の無駄なく。
視線が一度で状況を把握する。
「……やっぱりな」
◆◆◆
ルアン。
動かない。
だが、すでに“配置済み”。
遮蔽物。
退路。
射線。
すべてが設計されている。
ネロが言う。
「いい配置だ」
ルアン。
「当然です」
◆◆◆
次の瞬間。
同時に動く。
ネロ。
ルアン。
交差。
フェイント。
回り込み。
ネロは“現場”。
ルアンは“構造”。
互いに、戦場そのものを操作する。
◆◆◆
ネオン。
「戦術対決!」
ソフィア。
「いいわ」
◆◆◆
ルアンが一歩下がる。
ネロが詰める。
誘導。
遮蔽物。
死角。
「罠か」
「ええ」
◆◆◆
ネロが笑う。
「でも遅い」
次の瞬間。
軌道が変わる。
直線ではない。
“読みの外側”。
ルアンの想定を外す。
距離が消える。
◆◆◆
――ドンッ。
ネロの拳。
ルアンの腹へ。
衝撃。
崩れる。
センサー。
ピッ
ネオン。
「ルアン脱落!」
ソフィア。
「現場判断ね」
◆◆◆
ネロが息を吐く。
「残りは――」
◆◆◆
その瞬間。
空気が変わる。
◆◆◆
ラザロ。
「来る!」
ネロ。
「どこだ!」
「わからん!」
◆◆◆
――パン。
乾いた音。
一拍遅れて。
ネロの体が止まる。
胸。
命中。
◆◆◆
ネオン。
「……ヒット」
「ネロ、脱落」
沈黙。
◆◆◆
距離――約2km。
森の遥か上。
アシュレイ。
スコープ越し。
「指揮官、落ちたな」
◆◆◆
ネロが笑う。
「……見えねぇな」
そのまま、崩れる。
◆◆◆
ソフィア。
「規格外」
ネオン。
「今の当てる!?」
ソフィア。
「当てるのよ」
◆◆◆
戦場が静まる。
残り――
ノア。
カサンドラ。
そして。
アシュレイ。
◆◆◆
ノアが視線を上げる。
森の奥。
風。
光。
歪み。
「……いるな」
◆◆◆
アシュレイ。
スコープ越し。
「見えてるな」
◆◆◆
互いに理解する。
◆◆◆
ネオンが呟く。
「これ……」
ソフィアが答える。
「ええ」
一拍。
「ここからが、本当の戦いよ」




