112話 決着前夜
――第一拠点・裏山。
森は、もう戦場だった。
踏み荒らされた地面。
弾痕に裂かれた幹。
折れた枝が、足元で静かに軋む。
さっきまでの模擬戦とは違う。
空気が変わっている。
軽さが消えた。
――これはもう。
戦いだ。
◆◆◆
残存戦力。
チームA。
ノア。
カイン。
ラザロ。
チームB。
アシュレイ。
カサンドラ。
カリナ。
◆◆◆
ネオンの声。
「残り三対三!」
「ここから最終局面!」
その声は、森に吸い込まれていく。
誰も反応しない。
もう全員が、別の場所にいる。
――“戦場の中”だ。
◆◆◆
ソフィアは静かに森を見ている。
何も言わない。
ただ観ている。
その視線は冷たい。
だが――
逃さない。
呼吸。
間合い。
視線の揺れ。
すべてを拾っている。
◆◆◆
風が止まる。
その一瞬。
戦場が動いた。
◆◆◆
カリナが踏み込む。
「行くよ」
一直線。
迷いなし。
狙いは――カイン。
◆◆◆
カインが笑う。
「来い!」
踏み込む。
拳を構える。
◆◆◆
衝突。
――ドンッ!!!
衝撃が森に響く。
拳と蹴り。
力と速度。
真正面。
◆◆◆
カリナの連撃。
速い。
視界から消える。
回り込み。
蹴り。
肘。
膝。
流れるような連携。
――止まらない。
◆◆◆
カインが受ける。
重い。
だが崩れない。
一歩も引かない。
◆◆◆
「いい」
◆◆◆
ソフィアが呟く。
◆◆◆
「潰し合いね」
◆◆◆
カインが突っ込む。
体重。
圧力。
タックル。
カリナが回避。
すれ違いざまに蹴り。
――ドンッ!!
◆◆◆
ネオン。
「また前衛同士!」
◆◆◆
その背後。
ラザロが照準を合わせる。
呼吸を止める。
カリナ。
一瞬の隙。
引き金。
だが――
◆◆◆
「……来る」
◆◆◆
――パン。
ラザロの肩。
命中。
◆◆◆
ネオン。
「ヒット!」
◆◆◆
ラザロが即座に伏せる。
呼吸。
判断。
位置変更。
◆◆◆
そして、理解する。
◆◆◆
「……遠い」
◆◆◆
距離――約1.7km。
◆◆◆
アシュレイ。
木の上。
さらに奥。
スコープ越し。
世界を“切り取る位置”。
◆◆◆
「一人削る」
◆◆◆
カサンドラ。
「ラザロ、再狙撃可能」
アシュレイ。
「了解」
◆◆◆
ラザロが動く。
だが。
――パン。
胸。
命中。
◆◆◆
ピッ
ネオン。
「ラザロ脱落!」
◆◆◆
カインの視線が、わずかにズレる。
ほんの一瞬。
◆◆◆
その瞬間。
◆◆◆
カリナの蹴り。
――ドンッ!!
◆◆◆
体が揺れる。
だが――
立つ。
◆◆◆
「まだだ」
◆◆◆
その時。
◆◆◆
空気が変わる。
◆◆◆
ノア。
◆◆◆
動く。
一気に。
迷いなく。
最短で。
◆◆◆
“中”へ。
◆◆◆
カサンドラ。
「来る!」
◆◆◆
遅い。
◆◆◆
ノアが“現れる”。
◆◆◆
距離ゼロ。
拳。
――ドンッ。
◆◆◆
一撃。
◆◆◆
カサンドラが吹き飛ぶ。
◆◆◆
ピッ
ネオン。
「カサンドラ脱落!」
◆◆◆
ソフィアがわずかに目を細める。
◆◆◆
「……入られたら、終わり」
◆◆◆
残り。
チームA。
ノア。
カイン。
チームB。
アシュレイ。
カリナ。
◆◆◆
カリナが笑う。
「いいね」
「まだ終わらない」
◆◆◆
――パン。
◆◆◆
カインの脚。
命中。
◆◆◆
膝をつく。
動きが止まる。
◆◆◆
アシュレイ。
「一人削る」
◆◆◆
カリナが踏み込む。
トドメ。
◆◆◆
その瞬間。
◆◆◆
ノアが割り込む。
◆◆◆
拳。
止める。
◆◆◆
カリナの動きが止まる。
◆◆◆
ノア。
「下がれ」
◆◆◆
逆らえない声。
◆◆◆
カリナがアシュレイを見る。
◆◆◆
アシュレイ。
「……いいのか」
◆◆◆
カリナ。
「任せる」
◆◆◆
一歩、下がる。
◆◆◆
カインが笑う。
血を吐きながら。
◆◆◆
「任せた」
◆◆◆
ピッ
カイン脱落。
◆◆◆
残り。
ノア。
アシュレイ。
◆◆◆
森が静まる。
完全な静寂。
◆◆◆
距離――約60m。
◆◆◆
互いに銃を構える。
◆◆◆
動かない。
◆◆◆
ネオン。
「……来る」
◆◆◆
ソフィアは何も言わない。
ただ、見ている。
◆◆◆
風が吹く。
葉が揺れる。
光が変わる。
◆◆◆
すべてが、影響する。
◆◆◆
ノア。
一歩。
◆◆◆
アシュレイ。
照準。
◆◆◆
止まる。
◆◆◆
ノア。
「撃てば当たる」
◆◆◆
アシュレイ。
「外せば終わる」
◆◆◆
互いに理解している。
◆◆◆
この距離。
この間。
この一発。
◆◆◆
ネオン。
「これ……」
◆◆◆
ソフィア。
「ええ」
一拍。
◆◆◆
「これが――“価値”」
◆◆◆
その瞬間。
◆◆◆
二人が同時に動いた。
◆◆◆
――パン。




