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296 新武器お披露目会②

そして次に試すのは、コウチだ。

ぱっと見はただの槌だが、ここから変形するはずだ。

勿論槌使いのショウは期待して見ているが、なぜかルミスも目を輝かせながらメモを持って見ている。


「ま、待ってくれよ、ここを引くんだっけか…うおっ!」


教わったとおりに槌を操作すると、勢いよく槌が変形し、削槌となる。叩き潰すのではなく、削り取る形状だ。


「コウチ、芯で捉えるより、振り切る感じでやってみろー」

「おうっ」


コウチにアドバイスをしつつ、見守る。

少しだけ深呼吸をしたコウチは、丸太を見据え、剛腕にて削槌を振るった。


「わっ、すごい」


声を上げたのはショウだ。

コウチは予想外の手ごたえに1回転横に回転して転んでいた。

その場に残ったのは、まるで噛み後のように抉れた丸太。そして中心が抉られ、自らの重さを支えきれなくなった丸太が折れる。


「コウチ、コウチ、変形解除して」


俺はリクエストする。

コウチが変形を解除すると、飛び出ていた槌の縁の部分の刃が引っ込み、抉り取った丸太の一部が地面に落ちた。

おー、すげー。


「これなら魔獣にも対応できるな…!」


コウチは嬉しそうにガッツポーズをした。


「あの、触らせてください、というか私にも貸してください!」


珍しくショウがコウチのもとに駆け寄っている。

満更でもなさそうだが、俺は逆に興味は尽きたので、次にアルカに目を向ける。


「ん」


アルカは二刀を軽く振り、感触を確かめる。

そして俺の視線が自分に向いていることを確認すると、小さく笑って高く跳躍した。

そしていつものように斜め上空に向かって炸裂機構を用いて飛ぶ。

ここからがキモだ。

炸裂機構を使用していないもう一刀の細剣が爆発し、その推進力でほぼ真逆に方向を変えてさらに上空に飛んだ。

多段炸裂機構でも似たようなことができるが、キメラ自体が重いためあそこまで自由自在に空を舞うことはできない。


「おっと」


かなり高度を上げていたアルカはきちんと落下位置を計算していたようで、俺の腕の中に落ちてきた。


「師匠、ナイスキャッチ」

「おう、ナイスジャンプ」


ここまで精密に落下地点を調整できるなら既に使いこなせていると言ってもいいだろう。

流石のセンスだ。

そして最後はカーリ。

周囲がなんとなく浮ついている中、彼女だけは己の武器を構えて、剣先を一点に見つめていた。

カーリだけは、武器の形状から変わっていて、武器種の変更に近いものがある。アルカも2本持ちにはなったが、結局は細剣のままだ。

そのため彼女は真剣に武器と向き合っていた。


「大丈夫だカーリ。まずは、触ってみよう。動かしてみないと何も分からないさ」

「お師匠様…」


俺はカーリの手を、回転刀の起動レバーにそっと添えた。


「絶対早く武器見たいだけだよあれ」

「お前のため…みたいな雰囲気出してるけど絶対そうだね」


姉妹の野次は聞こえないこととする。


「そうですわね、試してみないと。では、お師匠様。少し離れていてください」


今までの回転刃と違って、回転刀は起動時に爆音が鳴り、あまり長い時間稼働させることはできない代わりに瞬間的な威力がウリになっている。確かに巻き込まれると危険なので、数歩下がる。


「きちんと見ていてくださいね」

「おう、見てるぞ」


カーリは覚悟を決めたように、起動レバーを引いた。

いつもの炸裂機構のような炸裂音が響いた。


「くぅ…!」


カーリの表情が険しい。

それに反して、握っている刀身はかすかに振動しているだけで見た目に大きな変化はなかった。


「ロンタウ、あれちゃんと動いてるのか?」


一番目が良い奴に聞いてみる。


「ロンタウは遠くまで見える目だ。早く動くのは微妙」

「あ、じゃあエフテル」


コイツはガナワ山脈のクレバス内で死波の攻撃が見えていた超人だった。


「うん、ちゃんと動いてるよ。触ったらやばそう」


そんなエフテルが言うなら間違いない。


「は…ぁッ!」


なんとか回転刀を丸太に押し付けたカーリは、丸太を綺麗に切り裂いたあとに転倒した。


「あぶねえ!!」


先ほどの話だと触れるだけで危険という回転刀がカーリの手から離れたので、誰かに誤ってぶつからないように拾い上げた。

確かに凄く強い振動のようなものを感じる。持っているのが辛いほどの暴れん坊だ。

そして丸太を見る。

信じられないほどきれいな断面だった。

回転刀が徐々に勢いをなくし、停止したことを確認し、カーリの手を引いて立ち上がらせる。


「大丈夫か?バランスを崩したように見えたが」

「ええ…少し手ごたえが予想と違って…」

「手ごたえが?」

「ええ…。切れ味が良すぎて、切った感覚がありませんでした…」

「そこまでか!」


切れ味が良いとは聞いていたが、それほどまでだとは思わなかった。


「先輩~?弟子が転んでるのに何笑ってるんですか〜?」


ハルゥに少し咎められるように名前を呼ばれたが、別にカーリより武器を優先したわけではない。


「実戦までに一緒に練習して、慣れていこうな」


いつものようにカーリの頭をポンポンと撫でた。

照れくさそうに肩をすくめつつも、大人しく撫でられているのが可愛らしい。


「よしこれでやっと全部終わったな。解散、解散」


レイがパンパンと手を叩く。

お前興味ないならこなくて良かったのに…。


「君らはああいう武器、興味あるか?」


シリアルキラー戦に抜擢されたものの、“黒星”のように武器を新調しなかった“豊穣の奏”の2人に訊ねる。

というのも、思ったより2人ともレイ同様に興味がなさそうに見えたからだ。


「んー、そうですねえ」


ハルゥは顎に指を当てて、考えるような仕草を取る。

そしてまだ着たままの新防具を広げて見せてにっこり笑った。


「正直火力には困ってませんし、防具がもらえればいいんじゃないですかね。新しいことを覚えても使いこなす自信はないですし」


使いこなす自信はない、というところでカーリを見たことには触れないでおこう。


「ですので、御心配なく。ね、ミーン?」

「じゃんねー。同意見じゃん。たださえ下手くそなのに、あんな杭投げられるわけないじゃん」


そうじゃんね。


「お手本に忠実なタイプですから、わたしたち。目指すべき姿はルミスさんとか、先輩ですよ」


最近は俺も変な武器を使っているのだが…。


「今はカーリちゃんのフォローが先輩の役目ですね。あの子は多分わたしたちタイプなので」

「そうだな、俺もそう思うよ」


ひとまずはやはりそこだな。慣れなければ実戦投入も危うい。

さて、皆それぞれ楽しそうにしているが、エフテルがチエに回転杭を貸して投げさせようとし始めたり危険な雰囲気になっているので、場を締めよう。


「じゃあ、今週あたり街に向かって、そこで何か依頼を受けよう。メンバーは、シリアルキラー戦の前線を張るロンタウと“黒星”、“豊穣の奏”だ。狩りに参加させる予定はないが、“月の果実”も拠点が気になるならついてきていいぞ」


逆に言うとルミスとレイだけがお留守番ということになる。


「なんで街なんだよ。ここでいいじゃねえか」


案の定レイからクレームが入る。


「危険度6の依頼があるといいなって。なくても危険度5の高難易度依頼とか。アオマキ村は今平和だから」


平和なのは当然悪いことではない。

ただ、狩人的に少しだけ不都合なだけなのだ。


「ちっ。おいカーリ。もっと早く街と行き来できるようになんか考えとけってあの狂人に言っとけ」

「え、あ、はい。かしこまりました。まもなくではあると思いますけども」


無茶振りかと思いきや、何かはあるらしい。

普通に皆気になるようで、カーリの返事を待っている。

カーリは少し困ったように、秘密なのですけど…と前置いてから、


「前に回転刃の応用での自走馬車のようなものを検討しているというお話をしたような記憶がありますが、その試作車が間もなく運行するようです。勿論、部外秘ですので…ね?」


と、こそっと教えてくれた。


「じゃあそれで行って早く帰って来い!」

「無茶言うな…」


駄々っ子になってしまったレイを宥めながら、その場は解散となる。

“月の果実”も放置してきた自分たちの家が気になるらしく、街に同行することとなった。

俺もさっさとこの大きくて乱暴なガキを黙らせて街に向かう準備をしよう。

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