291 黒星の新たな力②
やがてエフテルとアルカも工房にやってきた。
…なぜかフリフリの可愛らしい衣装を着て。
「え、エフテル…あの、あなた今おいくつ…?」
カーリが戦慄しながらエフテルを指さした。
「うるさいな!流れでこうなっちゃったんだよ!」
まるで劇団の歌姫のようにフリルのついたピンク色の可愛らしい衣装だ。正直似合っていると思う。ただ少し残念なのは、いつも見せている健康的なお腹が見えないことくらいだ。全体的に露出度が低い。
「師匠、どう?」
俺の前でクルリと回って衣装を見せてくれるアルカ。
こちらは姉のエフテルに対して、中々に露出度が高い。衣装はセパレートだし、豊満な胸もわざと強調しているようなあざとさがある。そして姉のピンク色とお互いに引き立て合うように水色の衣装だ。
「2人ともかわいいな!」
2人に対して俺は、親指を立てて精一杯の笑顔を見せた。
「ちょっとキモイな…」
「キモイな、旦那」
「エフテル、その衣装を貸しなさい」
コウチとハカの意見は聞こえなかったことにした。
「じゃあミヤ、引き続き説明を頼む」
表情が引きつっているミヤの方を叩くと、我に返ったように図面を取り出した。
「じゃあ、これ、です」
それは槍のようなものだった。
工房の2人と俺以外が、一体誰の武器だと言わんばかりに首を傾げる。
俺は図面の隅っこの縮尺のところを指さした。
「あたしの!?」
エフテルが自分を指して大きな声を出したので、頷いておいた。
「回転杭です。これが一番傑作だと思います」
ミヤがドヤ顔で説明を始めた。
「基本的に針の弱点は通常投擲の攻撃力の低さです。射出機を使わないと威力を出すことができない」
「まあ、そうねー。どうしてもあたしの細腕じゃ投げる力もそこが知れてるし、あんまり力いっぱい投げると狙いが逸れるし」
それでも今までやってこれたのはひとえにエフテルの投擲技術の賜物だろう。
「この杭は、杭自体に回転刃の炸裂機構のようなものが搭載されています。先端が横に高速回転することで、相手を掘り進むことができるということです」
「へー、すごいね。重さは?」
「針3本分くらいです」
「許容範囲だわ。あとは回転がかかって軌道がどうなるかだけど、そこはあたしならなんとでもなるか」
偉そうな発言だが、ここに関してだけならば信頼している。俺はエフテルよりも投擲センスがある人間を見たことがない。
「ちなみに、さ…。一番気になってることがあるんだけど」
エフテルは今までで一番深刻そうな表情を浮かべる。ミヤは、本当に自信があるようで、何でも来いと言わんばかりに身構えた。
「それ、何本買わされんの?絶対高いでしょ」
スパーンとエフテルの頭をカーリが叩いた。
「痛いな!!なにさ!!」
「あなたこの期に及んでそのようなことをおっしゃりますの!?レギオンがどれほどの相手かはデュアルビーストで分かったでしょう!」
「いやそうだけどさ!これ普通に今後レギオン以外にも使うでしょ!そのときのための参考に聞いてるだけ!」
「そもそもあなた、この、狩人免許を見せなさい!」
カーリはエフテルの狩人免許を奪い取り、それを眺めて、今までの勢いを失う。
「あ、あら…?ギルドへの預金がない…?」
なるほど、カーリはエフテルが十分に金持ちであることの証拠を見ようとしたのだろう。現金を持ちたくない狩人のために、ギルドは金を預かってくれる。
そして、どれだけ預けているか、そして引き出すときのために狩人免許にはバッジのようなものが付いているのだ。ようはそれが沢山ついていると金持ちという話になる。
「多分そいつどっかに現金隠してるぞ」
「師匠!?」
そもそも狩人等級1級にもなれば、世間も羨む大金持ちと言っても良いはずだ。
「収入が増えれば支出も増える、当たり前のことだな」
「わーん!こんな世界いやだーー!」
はい、これでエフテルの問題は解決。
素晴らしい武器をありがとう。
残るはアルカの武器だけだ。
いつも通り無表情だが、そわそわしているのが分かる。
最後の図面は、一見ただの細剣だった。勿論アルカ用に短くなってはいる。
「これを、二刀作ります。二刀流です、ね」
なるほどそう来たかと思った。
先日の酒場でのアルカの意見もだいぶ取り入れていると言える。
エフテルと違い、アルカは大人しく説明を聞いている。
「結局、武器に多段炸裂機構を付けるのは前の説明のとおりなのでやめました。でも機動力は上げたい。そうなれば、いっそのこと細剣を2本にして、炸裂機構を合計2個にしてしまえば解決なのでは、と」
要は発想の転換だ。
多段炸裂機構を付けて重くなってしまうのであれば、いっそのこと武器をもう1本増やそうという。
「なるほど。いいね」
アルカは短く一言だけ呟いて頷いた。
まだまだ説明したりなそうだったミヤは、こちらをちらりと見て、結局説明を続ける。
「両手で武器を持てるように炸裂機構はレバー式からボタン式に。1本で足りるときは柄同士を接続して合体させることもできます。勿論、キャンプに置いて行ってもいいです。あとは」
「分かった分かった、ありがとう。アルカはもう大丈夫だってさ」
止まらなそうだったので、強制的に止めておいた。
そしてこれで全員の新たな装備の案が出そろったことになる。
「親方、これらは魔獣の素材で用意できるのか?」
「いんや、多分針は従来通りヒシゴクガツマ鉱石だな。消耗品に使うには貴重過ぎるだろう」
「それはそうだ」
それでも全員の戦闘力アップには間違いない。
「防具も作る予定だから、採寸すんゾ。おら、脱げ!」
コウチは何も言わずに服を脱ぎ始め、カーリも準備を始める。
残りの2人は…。
「というか、なんでそんな服着てるんだ?」
もう一度、ひらひらふりふりの衣装を眺める。
「ほら、村人の皆にあたしかわいいよね?って聞いて回ってたじゃん?」
「おう」
「そしたら、思ったより沢山の人に…というか昔からこの村にいる人たち全員に盛り上がられちゃって」
そりゃそうだよなと思う。この2人に限らず、【マルチウェポン】の女性たちは全員レベルが高い。
そんな中で、“黒星”と“豊穣の奏”はアオマキ村を守ってきたということで偶像的存在になっているのだ。
「これ着たらもっと可愛くなるよ、師匠も喜ぶよって言われて、乗せられちゃった。お姉ちゃんが」
「あたしが!?アルカも満更じゃなかったでしょ!?」
「私は師匠一筋だから。これまでもこれからも」
「あたしもだよ!」
2人から抱きつかれる。
既にインナー姿となっているカーリがこちらに来たそうにそわそわしているが、羞恥心が邪魔をしているようだ。
「いいから脱げー!」
「きゃー!」
痺れを切らしたハカが姉妹に襲い掛かり、どたばたとしながら女性陣はいつものように工房に消えていく。
取り残されて、親方に採寸されているコウチが呟く。
「そういえば、あの2人の元々の服ってどこにあるんだ?」
「確かに気になる」
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