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288 大討伐方針会議

5月からまたキリの良いところまで毎日投稿します!

だいたい1か月間くらい頑張りますので、応援よろしくお願いします。

「大事になったなあ」


難しい表情で、ウエカ村長が呟いた。

まだ日が高いので、彫りの深い顔に差す影がとても目立つ。

少し大人数で、いつもの酒場に集まってギルドからの通知を見ながら【マルチウェポン】で打合せをしていた。

クランにはロンタウも所属しているので、ロンタウとシタコ村長もいる。

それに加えて、“月の果実”もこの場にいた。

もちろんルミスもいる。

さて、何をそんなに頭を悩ませているかというと、原因は勿論ウエカ村長が持っている通知文。

そこにはラージマザー大討伐作戦について、指名依頼と緊急依頼を兼ねて記載があった。

ダーシー家殴り込みの後、医者が必要な人間は医者に行き、その後豪華な食事で“双極”の昇格祝いをしてもらった。

だが、直前にしていた話の内容が内容なので、素直に喜ぶことができないものも少しいた。

そして、アオマキ村に戻る際に、街に住む“月の果実”もほぼ確定で依頼に参加することになるということで、しばらくの間、再びアオマキ村に滞在することとなったのだ。


「ラージマザーの全長は2000mを超える予想…どうしてこんな生き物が今まで見つからなかったんだろうねえ。しかもボクらの森にもいたんだろう?」

「普段は埋まってるらしいぞ」


俺が補足すると、それも書いてあるけど…とウエカ村長が通知を読み直す。


「にしても、当時のハゲの読みは当たってたな」

「なんだっけ?」


レイの言葉にエフテルが思い出そうともせずに訊ねる。エフテルらと同じ卓に座るカーリが、すぐに補足してくれた。


「巨大な透明の竜は、巨大な魔獣の触手の1本ではないか、という仮説ですわね」

「そんな話があったような気もする」


当然皆の視線はルミスの真っ黒な耳に向かう。

こいつ感覚がないことを良いことに、耳飾りなんかつけていやがる。


「まともに戦って敵う相手ではなかったな」


ルミスは触手の1本と接戦だったことを少し恥じているようだった。とはいえ、あまりのサイズ感ゆえ逆に勝てる人間の方がおかしいだろう。

と言う旨の意見を述べると、俺に視線が集中した。


「いや流石に無理だホントに」


俺はレイに視線を流す。


「お前が無理なら俺様にできるわけねえだろうが」

「どういう威張り方だよ」


正直、全長2000m以上なんて想像できない。今まで対峙した一番大きい獣ですら50mを超えない。アーシさんが言うとおり、まさに山だ。


「というより、それ知らないんですけど!ルミスさんって、ウチらと会った時から耳黒かったじゃん!?」

「違うな、ミーンさんと会ったときに黒くなったんだ」


ミーンが突っ込み、コウチがさらっと応えた。確かに“豊穣の奏”だけ仲間外れのような感じはするだろう。というか、実際あのときは仲間じゃなかったし。


「蛇嵐戦のとき、何か隠されてるとは思ったんだよねえ。忘れてたけど」


ハルゥもそう言う。繰り返すが、あの頃は魔獣について戒厳令が敷かれていたので、仕方ないのだ。

ということで、話は逸れたが、人間だけでは太刀打ちできない強大な魔獣を討伐するためにアーシさんが建築した砦の迎撃装置で戦う。

要は八方発砲魚のときの船上戦のスケールアップ版のようなものだ。

相手は魔獣だ。

何とか核さえ見つけて壊すことができれば、勝機はある。


「で、我らが狩人たちが狩人のリーダーになるんだろう?」


そうなのだ。

ウエカ村長が言うとおり、今回の大討伐には多くの狩人が参加する。2級以上は強制だし、それ以外も希望すれば参加することができる。

巨大な相手を倒すため、総勢100人以上の狩人たちが力を合わせて戦おうということである。

その指揮を、俺達【マルチウェポン】が執るのだ。


「レギオン討伐の功績は大きかったな」

「なんだか父の権力のおかげみたいで素直には喜べませんわ」


笑うルミスに対し、カーリはぼやいていた。狩りに関しては、回転刃以外は親が絡まなかったカーリだ。少しプライドが傷つく部分はあるのだろう。

だが、今回指揮を執るのは“双極”ではない。【マルチウェポン】だ。全員が評価された結果であると俺は思っている。


「てか、そんなパンピーどもが参加して大丈夫なんかね。死人が出まくりそうだが」


ロンタウの発言には即座にレイが口を挟んだ。


「お前みたいにか?」

「お前もだろうが!!」


ちなみに俺もである。


「書いてあるよ、その辺も」


ウエカ村長が読み上げてくれる。

低級の狩人は、主に迎撃装置を用いて狩りに参加するため、危険は少ないとのことだ。


「え、ホントに大丈夫なの?ほら、デュアルビーストのビームみたいなのないの?」

「ちょっとまだ早いんじゃないかな」


エフテルの言う懸念は正しいし、アルカが弟子を気にしている気持ちも分かる。


「死んでも良いって、こと、です、よね」


ぼそっと放ったミヤの言葉はやけに大きく聞こえた。

そしてその意見はきっと正しい。


「え、ええー!そんなわけないよ、ミヤちゃん!」


ミヤに説明を促すようにチエがガクガク揺らしているが、これ以上喋る気はないらしく、ミヤは俺の膝の上に逃げてきた。

一気に不安そうにする“月の果実”を、なんとか落ち着かせようとするハルゥから、説明しろというような鋭い視線が送られた。

レイに視線を流すと、レイはルミスに視線を送る。ルミスは何かを話そうとして、寡黙な男はうまく話せなかった。

もたもたしていると、ミーンから石ころが飛んできたので、わざとらしく咳払いをして説明を始める。


「もし呪毒に侵されても、そこでラージマザーを倒せれば全員復活できるから問題ないという発想だろう。お前ら、そもそも今回の狩りは失敗できないということを認識してるか?」


意外にも、“黒星”は全員がすぐに頷く。

“豊穣の奏”も、何かに気づいたように小さな声を上げた。


「ああそうか。負けたら街がなくなんだな」


ロンタウがポンと手を叩いて納得した。

その言葉を聞いて、まだ理解できていなかった者たちがあっと声を上げた。

ラージマザーは街に向かって移動している。

砦で討伐できなければ、その巨体は街を飲み込むだろう。そうすれば、多くの人々が路頭に迷い、この大陸で一番大きなギルドの支部がなくなり狩人への支援もなくなる。

要は、絶対に壊されてはいけない人類の拠点の防衛作戦でもあるのだ。


「だから、多少の被害とか、倫理的な部分を無視してでも、ギルドは今回の依頼、成功させないといけない、です」


俺の膝の上に収まって満足そうなミヤはそう念を押した。


「つまり街を拠点にする私たちにとっても、他人事ではないってことか…」


ショウが自分事として捉えた呟きに、アルカが冷たく指摘を入れる。


「【マルチウェポン】に魔獣戦を他人事だと捉えるような奴はいないと思ってたんだけど」

「ちッ、分かってるよ。言葉の綾だよクソ師匠!!」


まあ、まあ。

アルカが言うことも正しくはあるが、“月の果実”はまだまだ3級。昇級ペースは異常だが、魔獣と相対するには実力が程遠い。現実味がなくても仕方ない。


「んで?状況を理解したところで、今後の動きをどうするか決めてくれよ、リーダー?」


ロンタウに俺は頷いて、席から立ち上がる。

各々雑談なりじゃれ合いをしていたが、すっと静かになってくれたので、皆の視線を受けながら話始める。

まず、既にウエカ村長と決めていたことから。


「前提として、依頼を断る選択肢はない。指名で、緊急だ。だが、そのような事情がなくとも、断る選択肢はないだろうと思っている」


カーリやミーンやエツなど、責任感が強いものが強く頷いてくれた。


「間違いなく対魔獣に詳しいのは俺達だし、俺は【マルチウェポン】を現状最強格のクランだと思っている。そんなクランが参加しないで街が滅びたら、俺らの気持ち的にも世間体的にも終わりだ」


そもそも退路はアーシさんに潰されているという点もあるが、それを除いてもみすみす被害を見逃すことはできない。


「命がけで街を守るってのもまさしく英雄狩人って感じでいいだろ?」


アルカやコウチが湧き上がる。作者のルミスは少し恥ずかしそうに笑った。


「ただし、本当に命が危なくなった時には俺達優先で動く。参加して真面目に戦っていれば、最悪失敗しようが許容はできる。俺達の帰る場所はアオマキ村なんだから」


ま、ロンタウはヒシガツマ村だけどな。なんてロンタウがシタコ村長に声をかけていた。


「細かいフォーメーションや役割分担は少し考えさせてくれ。それをもとに1年間みっちり訓練して、依頼の成功率と生存率を底上げする」


俺は順々に、3つのテーブルを指さす。


「“黒星”、“豊穣の奏”、“月の果実”。お前らの実力をそれぞれ今から1級分引き上げる。本番で死なないように、死ぬ気で訓練するぞ」

「はい!」


元気な返事が返ってきた。やる気は十分のようだ。


「おい、実はそこの女も1級らしいが?」


レイがロンタウを指さす。


「ああ、ロンタウはこの依頼を達成すれば特級になるだろ。実力は十分だし」

「なあ!なんか指導役も冷たくないか!?」


かくして、ラージマザー大討伐依頼に向けて、【マルチウェポン】の準備が始まった。

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