135 ヒシガツマ防衛戦〜作戦会議②
ロンタウは“四極”を推定危険度5の新種の獣狩りに同行させたいと言う。
「却下します。事前にこの村に滞在している狩人の等級は調査済みです。そちらの方々は4級。残念ながら実力不足です」
だろうな。
にべもなく断られるが、ロンタウは退かない。
「本当に調べたのか?そこの4人の中に混ざっている男のことも」
「存じ上げません。アオマキ村から派遣された狩人は6名だと報告を受けていましたが」
「7人だ。その男も狩人。しかも黒い免許のな」
「そんな…、ですが、報告には…!」
「ということだ。だから頼りになる。同行を許可してくれ」
え、そういう切り口で攻めるのか?
ロンタウが何を考えているのかがいまいち分からない。実際今の“四極”では力不足だろうし、俺なんかもっと役に立たない。
「いくらでも語ることはできます。証拠を見せてください」
「まあ、待ってな」
「ああっ、あっ…」
ロンタウが俺の服やポーチをゴソゴソと漁る。そしてポーチから勝手に俺の狩人免許を取り出した。
それを見たギルドの観測員はハッと息をのんだ。
「“双極”の…!危険度な…いえ、新種の…!」
はきはきと喋っていた今までとは打って変わり、一気にしどろもどろだ。
危険度7のアイツのことは一般的には公表されていない。だから口をつぐむしかないのだろう。
しかし今度は納得したような顔になる。
「どこで聞いたかは敢えて訊ねません。ロンタウさん、貴方は今回の新種を例の獣と同等のものであると、故にラフト様を同行させると、そういうことでしょうか」
様付けになった。
しかしそういうことか。
“四極”はおまけで、万が一のときのために俺に判断してもらうと。ロンタウはそう考えたわけだ。
「そういうことだ。大体考えても見ろ。この広い砂漠とはいえ、数年間散策した地で、急に新種が見つかる方がおかしい。それに今回のヒシガツマ村襲撃の原因も分かっていない。イレギュラーにイレギュラーが重なったということは、次に起こることもイレギュラーだろう。最悪を想定して動くべきだが、特級など急に呼べるはずもない。だから、指導役とその弟子たちを同行させてほしいんだ」
少しの間、この多くの人数が集まったテント内が静まり返る。
ギルドの観測員は難しい表情で考え込んでいるし、事情を知らない他の狩人たちは何も言えない。もしかしたらシタコ村長はウエカ村長から事のあらましを聞いているかもしれないが、ロンタウに任せている。
長く感じた静寂のあと、口を開いたのはギルドの観測員だ
。
「…まず、当事者である“四極”及びラフト様の意思を確認していませんでした。当初は困惑していたように思えましたが、同行に関して賛成でしょうか?」
特に“四極”にはリーダーがいるわけではない。だが、このような対外的なことに対して、代表して意見を述べるのはカーリだ。
1分にも満たない間、他のメンバーと少し会話をして、自信を持って発言した。
「“四極”は、是非参加させていただきたいですわ!」
「もしロンタウさんの考えるとおりであれば非常に危険です。そうでなくとも、格上の獣。それでも意思は変わりませんか?」
「変わらず!」
横から自信満々にエフテルがしゃしゃり出てきた。
「危険で力不足なことは重々承知、だが俺達“四極”には目標があるんだ」
コウチも前に出る。
「師匠の敵討ち。忘れてないからね」
最後のアルカは俺にだけ聞こえるように囁いた。
一般的に敵討ちのためと言えば、冷静さを欠くと判断されることも多い。それ故の配慮か。
「ラフト様はいかがでしょうか。その、お怪我のことは伺っておりますが」
当然ギルドはこの腕のことを知っている。つまり、全盛期の実力が出せないことは知っている。それでも、特級であるということは規格外の狩人だと、このギルドの観測員は判断しているのだ。
「俺は…」
ちらりとロンタウ、弟子たちを見る。
今回の新種の獣が俺の腕を奪ったアイツだという可能性は限りなく低いだろう。
だが、可能性はゼロではないし、手掛かりになる可能性はある。
それになにより、俺との約束を守ろうと、ロンタウと“四極”の皆は危険を冒そうとしてくれている。
であれば。
「勿論俺はロンタウの意見に賛成する。特5級である俺と、“四極”はこの新種狩りに参加する」
「それでこそだ!」
バシーンと背中をロンタウに叩かれた。そういうえば、アオマキ村を出る前にも弟子たちにこうして元気づけられたな。
あのときの悪い予感は、この新種が原因なのだろうか。
だとすれば、なおさら俺がここで足踏みするわけにはいかない。
意見は出揃った。
ギルドの観測員はため息を吐いて、
「分かりました。ギルドとしては、“双極”の一員であり、“マルチウェポン”の異名を持つ特5級狩人ラフト様のチームメンバーとして“四極”を認識します。」
わざわざそんな古い名前を引っ張ってきて、この場で言いふらすのは意趣返しかなにかなのだろうか。普通にメンタルが辛い。
だがまあ、これでヒシガツマ村に迫る新種を狩りに行くロンタウへの同行が認められたのだ。飛び跳ねて喜んでいる弟子たちに習い、俺は小さくガッツポーズをした。
「あの!」
そんな中で声を挙げた狩人が1人いた。
「でしたら是非、わたしたちも同行させていただけませんでしょうかっ!」
「貴方は、“豊穣の奏”のハルゥさん。ミーンさんも同様の意見、ですね」
頷くミーンを見て、ギルドの観測員は少し目を閉じる。そして判断を下した。
「却下です。“四極”は前線に出ないことを前提に許可をしました。貴方方にも同様の許可を与えた場合、ただ見ているだけの狩人が6名。今人員を遊ばせておく余裕があるのですか?」
「し、辛辣じゃーん…」
落ち込むミーンに、さらに食い下がろうとするハルゥ。それを遮ったのはシタコ村長だった。
「“豊穣の奏”には、断慈鬼の方をお願いしたい…。ロンタウが抜ける以上、残るのは現役を退いた古株のみ。最大規模の断慈鬼を討伐するにはやや心もとない」
確かにヒシガツマ村には腕利きの狩人が多くいるが、そのほとんどがロンタウに専属狩人を譲ってから他の職業に就いている。現役の狩人と言えば、この場には“四極”、“豊穣の奏”、ロンタウしかいない。
「最大規模の断慈鬼…」
誰の声か分からないが、その呟きには重みがあった。
新種の獣にばかり話が持ってかれていたが、ヒシガツマ村に迫っている脅威には断慈鬼もある。
断慈鬼は、周りに食料がない環境で育つほど身体が大きくなり、凶暴になるという獣で、危険度5ではあるが、最大規模ともなれば特殊能力を持たない危険度6と言っても過言ではない強さを持つ。
アオマキ村で初めて会ったとき、“豊穣の奏”は3級に昇格したてで、危険度5を狩るのは不安だと言っていた。
自信がないだけで実力はあると俺は思うが、その自信は実績を積まなければついてこない。
「大丈夫だ嬢ちゃんたち!俺らもいっからよ!」
今まで会話に参加していなかったヒシガツマ村の狩人から声が上がった。
そうだそうだ、と次々に声が上がる。主に先遣隊にいた狩人たちだ。
「ヒシガツマ村は俺達の村だ。いっちゃん頑張んなきゃねえのは俺らよ」
「そうだそうだ、嬢ちゃんたちが助けに来てくれただけでありがたかったのに、そのうえ断慈鬼狩りも手伝ってくれるんだろ?鬼に金棒だぜ!」
「鬼はアッチだけどな」
「名前に鬼が入ってるだけで、ただの筋肉モリモリの巨人よ!」
「そりゃ鬼じゃ!」
「ガハハハッ!」
暗かった雰囲気が、一気に明るくなった。
“豊穣の奏”の2人の表情も軽くなる。
「呆れました。断慈鬼程度に恐れをなす狩人が、新種狩りなど…」
「それ以上は言うなよ」
「ッ…」
ギルドの観測員に対して睨みを利かす。そもそも俺達狩人はギルドにサポートをしてもらう立場だが、狩りを実際に行うのは狩人だ。どんな状況であれ、強大な敵に立ち向かおうとする狩人を見下すことを俺は許さない。
「じゃ、ウチらと皆で断慈鬼狩りじゃん!」
「おおおお!!」
よし、あっちは話がまとまった。
あとはこっちだ。
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