132 ヒシガツマ防衛戦〜休息
「ロンタウいるかー?」
家の前から声をかける。
「…入ってくれ!」
少し間があってから、上の方から返事があった。
俺は勝手知ったる家の扉を開き、階段を上がっていく。
やはりロンタウは3階の展望室にいた。
布団が敷かれているので、休むところだったのだろう。
「待ってた、指導役」
「お待たせ」
しかし専属狩人が村の状況を聞かずに休めるはずもない。
だからこそ、急いで俺は報告に来たわけだ。
「…仕事の話からでいいか?」
村に戻ってきたときのことがあるので、少し表情を伺う。
ロンタウは呆れたように笑いながら、手を前に出して、どうぞと話を促してきた。
これで安心して話をできる。
「先遣隊から聞いていたとは思うが、だいぶ襲撃は落ち着いてきている。実際、俺達が見張りをしているときも、村へのルートでは七色剣山2匹と尾塊狼1匹しかこなかった」
「半日で危険度4が3匹、か。最早平常並みだな」
ロンタウの言う通り、俺達が最前線に着いてからのペースであれば、全く普段の、平和な時期と変わらない。
「今は俺達の代わりに、“豊穣の奏”という3級狩人2人組のチームが最前線を引き受けてくれている。頼りになると俺は思っている」
「ああ、あの可愛い女の子2人組だな!」
何故そこで不機嫌になる…。
「まあ、そういうわけだから、少し俺達は休む。ロンタウも休んでくれ。流石に疲労が隠せなくなってきてるぞ」
酷い顔、というとまたロンタウを傷つけるだろう。婉曲的に伝える。
ロンタウの目の下はクマで真っ黒だし、いつもは綺麗な肌もボロボロだ。目も虚ろになってきている。
無理もない。下手すりゃ数日間徹夜で村を守ってきたのだから。
「ああ、そうするよ。やっと心配の種も戻ってきたことだし」
またチクりと言われる。
「そんなに心配だったのか?確かに先遣隊のメンバーと比べれば、“四極”は等級では劣るが、もう十分立派な狩人だ」
「そういう問題じゃない。大事に思ってる存在にイレギュラーが発生するだけで落ち着かなくもなる」
不貞腐れたように、照れたように顔を背けて言うロンタウを見て、思わず笑ってしまった。
「何がおかしい!?」
「いや、そんなに大事に思ってくれてたのかって思ってさ」
俺はあいつらの師匠だが、ロンタウも自分の弟子のように思ってくれてるんだろう。この家で6人でしばらく過ごした仲だしな。
「当たり前だ。もうロンタウの中では大きな、大切な存在なんだ。そこをしっかりと認識してくれ」
心外だ、と言わんばかりに大きなため息を吐かれた。
「分かった。肝に銘じておくよ」
俺が頷くと、ビシッと指をさされた。
「そもそも!“四極”が一人前だというのであれば、戦えない指導役が毎回狩場に同行する必要もないだろう!」
「そこはほら、やっぱり心配じゃないか。実際今回も少しピンチだったわけだし」
「ロンタウはもうアイツらの心配していないぞ。4級ともなれば、まして4人のチームなんだから、十分やっていけるだろう。過保護だぞ」
む、過保護か…。
確かにそうなのかもなと思ったこともあるが、他人に指摘されると痛いところを突かれた感じもするし、何やらムッとする気持ちもある。
「というか、心配していないってなんだよ、さっきと言ってることが真逆じゃないか」
「は?もしかして指導役、今までロンタウが“四極”の話をしていたと思っていたのか!?」
「え、違うのか…?」
大切な存在だから心配でって…。
「はあああああああ」
ため息なのか、怒りの声なのか分からない盛大な音がロンタウから吐き出される。
「も、もしかして俺のこと…?」
「もしかしなくても指導役のことだ!もう怒った、寝る」
「うわぁ!」
ロンタウは俺の手を引いて布団に押し倒す。
そのまま逃げようとする俺を離すまいと体にしがみついて、がっちりと抱きしめた。
「おい、離せ!」
「離さない。どうも指導役はロンタウのことを甘く見てる。慰労も兼ねて抱き枕になれ」
そしてそのまま寝息を立て始めた。
「ホントに寝やがった」
しかもガッチリと俺のことを抱きしめたまま。
大きな膨らみが全力で俺に押し付けられている。
どうも指導役はロンタウのことを甘く見てる。そう言われた。
2年前のことを思い出す。
特級狩人になったら、ロンタウをもらってくれ。
…求婚もされていた。
だが果たして、ロンタウは俺のことが本当に好きなのだろうか。
とりあえずあの場では無理せず特級を目指せよなどと結局真面目には答えなかったが、ロンタウが特級になったら本当に結婚するのだろうか。
専属狩人決定戦でロンタウに勝ったことがきっかけで求婚されたのは間違いないが、それは俺の運動能力を買われただけで俺のことが好きなわけではないのでは…。
などと、まじまじとロンタウの寝顔を見ながら考える。約40歳の見た目には到底思えない、むしろ幼く見える整った顔。それに加えて俺やコウチを悩殺するボディ。
しかも性格もかなり俺と相性が良い。狩人に関する理解もあるし、専属狩人としての志は尊敬できる。
「甘く見てるつもりはないが…少し、まだ待っててほしいな」
多分だが、一部の弟子からも同様の好意を向けられている自覚はある。
「なんか、俺も眠くなってきた…」
人肌に温められて、夜通し起きていた体が睡眠するよう訴えてきた。
弟子たちに行先は伝えているし、俺がいなくともあの様子では爆睡だろう。
じゃあ俺がここで寝てもいいな。
起きたころにはギルドの調査気球も戻ってきているだろう。そうなれば、襲撃の原因も、終わったのかどうかも分かる。
何事もありませんように。
相変わらず謎の不安は消えない。
杞憂であることを祈りつつ、俺はロンタウにしがみつかれながらそのまま眠りについた。
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